数百万円の奨学金を借りてまで大学進学をめざすことは「正解」とは言い切れないが…
部長からさらに出世するとなると、ポジションとしては執行役員など「経営陣」の域に入りますから、サラリーマンの出世の終着点は部長ということになりそうです。
先ほど、「企業規模」ごとの部長の給与差については軽く触れましたが、「学歴」によっても、明白な差が生じます。
日本の会社の大半を占める従業員数100人未満の中小企業に絞って男性・部長の平均給与をみていくと、高卒の場合は月収44万1,300円・推定年収651万円、50代後半のピーク時で年収684万円であるのに対し、大卒は平均月収51万7,200円・年収で756万円、同じくピーク時には814万円に達し、最大で約130万円もの給与差が生じていることがわかります。その現実には思わず肩を落としてしまうでしょうが、この給与差が65歳で受け取り始める年金額にも響いてくることを考えるとショックは2倍になるかもしれません。
現時点では、20~60歳の40年間に国民年金保険の未納がなく満額受け取れるとすると老齢基礎年金は年額79万5,000円です。元・サラリーマンは、老齢基礎年金の2階部分に例えられる老齢厚生年金を受け取る訳ですが、この計算に現役時代の給与差が影響するのです。
この「報酬比例部分」は、2003年3月以前は①「平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月以前の加入月数」、2003年4月以降は②「平均標準報酬額(標準報酬月額+標準賞与額)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」によって計算します。
上にみた通り、中小企業の高卒部長と大卒部長の間には100万円の年収差がありますが、同統計によると、それ以前の「係長時代」には約50万円、「係長時代」にも約60万円もの年収差があることがわかっています。大学に進学する同級生を後目に10代のうちから汗水垂らし、実績を積み重ねて部長にまで登り詰めた高卒サラリーマン。大卒サラリーマンに比べて「働いた期間」が4年分長くとも「受け取っていた給与」が少ないため、やはり受け取る年金も少なくなってしまうのです。
もちろん、高卒であっても大卒者の平均を大きく上回る収入を得るサラリーマンはいるでしょうし、大学卒業後の就職先の賃金が低く「毎月の奨学金返済が苦しい」と嘆く人も多くいますから、数百万円の借金を背負ってまで、「大卒」の資格を得ることが正解とは言い切れません。
しかし、あくまで平均値をみる限りは最終学歴が高いほど収入が多くなります。最近では「仕事に学歴は関係ない」という言説を耳にする機会も多いですが、少なくともサラリーマンの平均給与をみる限り、日本ではまだまだ「大学くらいは出ておいたほうがいい」というのが事実のようです。