もうお金を払えない……そう追い詰められたときの選択肢のひとつが自己破産。その4人に1人は高齢者だといいます。低年金、それに伴う生活苦が主な原因といわれていますが、多くの年金がもらえる元エリートだからといって「老後破産」とは無縁とは言い切れません。その理由についてみていきます。
気づけば「老後破産」寸前でした…〈年金月30万円65歳の元・超エリート〉でも危機に直面する根本理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

自己破産を迎える4人に1人は「高齢者」

裁判所の「司法統計月報(速報値)令和5年度9月度」によると、全地裁で新たに受理された破産事件は6,694件。1月からの累計は5万6,704件で、前年同時期比110.3%で推移しています。9月の破産件数のうち、自己破産は6,672件。そのうち個人の自己破産は6,042件。都道府県別にみていくと最も多いのが「東京都」で722件。「大阪府」「神奈川県」「埼玉県」「愛知」と続きます。

 

自己破産は、財産や収入が不足し支払不能であることを裁判所で認めてもらい、借金の支払い義務を免除してもらう(=免責)手続きのことで、特別な債務を除き、借金の支払い義務がなくなります。ただし、生活に不可欠ではない、高価な財産を処分しなければなりません。

 

一方、破産でよく語られるのが、現役を引退し、年金生活になった際に破産状態に追い込まれる「老後破産」。日本弁護士連合協会、消費者問題対策委員会による『2020年破産事件及び個人再生事件記録調査』によると、60歳以上の自己破産者は破産者全体の25%超。破産者の4人に1人が高齢者です。

 

実際に自己破産する人はどのような人なのかといえば、6割が「低所得」。「(保証以外の)負債の返済が滞り自己破産」が32.3%、「保証債務で自己破産」が25.1%、「病気・医療費がかさみ自己破産」が22.9%と続きます。「保証人には絶対なるな」と言われて育った人も多いでしょうが、そのような事情以外は、自己破産は「高所得者」には無縁の世界に見えてくるでしょう。

 

厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給権者の老齢年金の平均年金月額は5万6,368円。厚生年金保険(第1号)の平均年金月額 は、併給する老齢基礎年金の額を含めて14万5,665円。さらに65歳以上男性に限ると16万9,006円、女性に限ると10万9,261円です。しかしこれは平均値であり、厚生年金受給者でも5人に1人は年金月10万円未満。低年金で、しかも貯蓄もない……そのような状況なら、自己破産に陥るのも仕方がありません。