特別職の国家公務員の給与を引き上げる法案が物議をかましていますが、とばっちりを受けているのが一般の国家公務員。「公務員の給与を上げるなんて許せん!」とよく聞くフレーズが、そこら中から聞こえてきます。批判にさらされやすい国家公務員の給与についてみていきましょう。
平均手取り33万円の国家公務員…「税金ドロボー」呼ばわりされる悲惨な実情 (※写真はイメージです/PIXTA)

大企業よりも少なく、中小企業よりは多い「国家公務員の平均給与」だが…

そもそも国家公務員の給与は民間準拠。単純に言えば、民間の給与が上がれば、それに応じて国家公務員の給与も上がり、民間の給与が下がれば、国家公務員の給与も下がる、という仕組み。国家公務員給与と民間給与との比較は、企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の事業所を調査対象とする「職種別民間給与実態調査」などにより行われています。そのため国家公務員の給与は、中小企業の平均よりは高め。しかし大企業の平均給与と比べると若干低くなることが多いようです。

 

人事院『令和5年国家公務員給与等実態調査』によると、令和5年4月1日現在、国家公務員(平均年齢42.3歳)は25万2,790人、平均俸給は月33万4,218円、諸手当などを含めた給与は月41万2,747円でした。また本府省勤務の官僚(平均年齢40.4歳)の平均給与は月44万7,666円。手取りにすると33万~34万円程度です。

 

*同年1月16日~4月1日までの間の新規採用者(1万1,049人)及び再任用職員は、この人員等には含まれていない

 

国家を運営する中枢にいる人たちの平均給与、手取りで33万円。これが日本の現実です。そして国家公務員でよくいわれるのは、キツイ長時間労働。人事院の調査によると、令和3年度、他律部署約7.4万人のうち、上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合は15.6%と約1.2万人。前年よりも2.0ポイントの増加でした。特にエリート官僚である本府省の他律部署約3.8万人に限定すると、上限超えは28.1%と約1.1万人。さらに14.1%が月100時間の残業、19.9%が2~6月に月80時間超の超過勤務を命じられたことが分かっています。

 

なぜ、超過勤務を命じられているのか。最も多いのが「国会対応業務」で18.7%。次に「予算・会計関係業務」で12.6%。そして時期的に「新型コロナウイルス感染症対策関連業務」が11.2%と続き、「重要な政策に関する法律の立案」が10.5%となっています。

 

また5年に1度行われる『国家公務員長期病休者実態調査』によると令和3年度における長期病休者は6,500人で全職員の2.32%。前回調査に比べて1,174人増加。傷病別にみると「精神及び行動の障害」が4,760人で、長期病休者総数に対して73.2%にもなっています。職員10万人に対する精神疾患の長期病休者率は2001年から2006年にかけて大きく増え、その後横ばいで推移していましたが、令和3年度においては431.0ポイント増と大きく上昇しています。過酷な労働環境が影響しているといわれています。

 

民間企業に少し遅れて給与が反映される国家公務員。働き方についても民間企業より少し遅れて改善されていくのでしょうか。過酷な労働環境が知られるようになり、同情的な意見も目立つようになりましたが、まだまだ厳しい意見が注がれることも多いようです。今回の炎上にしても「残業して国会対応したのに、まさか批判の矛先がこちらに向ってくるとは……」と嘆きの声が聞こえてきます。