「定年退職後も働き続けたい」と考えている会社員は実に8割にもなるといいます。「そんなに仕事が好きなのか」と問われれば、「いや……お金の問題」というのが本音。では「お金があれば、完全引退しても不安はないのか」と問われると、どうも答えに窮してしまう事情が老後にはあるようです。みていきましょう。
年金月23万円だが…月収43万円・59歳夫「60歳定年で完全引退」を専業主婦の妻が〈全力阻止〉のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

年金待機中(60~64歳)も老後(65歳~)も安心の「貯蓄4,000万円」があっても

専業主婦だった場合、4,000万円強の貯蓄があれば、年金待期期間を乗り越え、夫婦100歳まで生きるための貯蓄もばっちりということに(計算上)なります。

 

ーーよし、貯蓄は4,000万円以上ある。年金も平均以上もらえる……よし、60歳で定年を迎えたら、仕事は辞めるぞ!

 

定年を前にした59歳のサラリーマン。平均的な給与をもらっているなら、月収は43万円、年収は700万円ほどです。同期は60歳定年を迎えても、そのまま仕事を続けるらしい。では、自分は……悩んだ挙句、貯蓄は十分と判断し、辞めることを決意。専業主婦の妻にそのことを告げると、思わぬ反応。

 

ーー何言っているのよ、定年になっても働けるなら、働きなさいよ!

ーーでも貯蓄は十分だし……退職金もあるぞ

 

そう説得をしても「仕事を辞めるのは断固として反対!」というスタンスを崩さない妻。なぜ、そこまで全力で「定年→完全引退」を否定するのでしょうか。それは老後資金4,000万円は、あくまでも統計上の話であって、老後特有の突発的な支出が発生することも考えられるからです。

 

老後の想定外の出費①住宅の維持費

住宅ローンを払い終えて、「正真正銘、この家は我々のものだ!」とホッとしていたとしても、住宅の維持費が結構高いのは、分かっているはず。10~15年ごとに、屋根や外壁の修繕が必要となりますが、その額、およそ100万~150万円。さらに年を重ねるごとに体は不自由になり、バリアフリー対応のリフォームも必須。また広すぎる家の維持は大変と、減築という選択の場合も。一生涯住むことを考えると、最低でも1,000万円以上はみておいたほうがいい、という専門家も。

 

老後の想定外の出費②高額療養費制度適用外の医療費

年を重ねていくと、「病院は友だち」というくらい、医療費が増えていきます。とはいえ「高額療養費制度」などの制度により、通常は目が飛び出るくらい高い! ということはないでしょう。ただし医療費のなかには高額療養費制度の適用外のものもあり、全額自己負担というケースも珍しくありません。「差額ベッド代 」「入院中の食事代」「先進医療費」「自由診療費」……色々とありますが、「差額ベッド代」は病院によって価格はまちまちですが、厚生労働省の資料によれば、1日あたりの平均は6,00円。特定の大学病院などで実施されている厚生労働大臣の承認を受けた療養である「先進医療」は、80以上登録されていて、100万円を超える技術費用も珍しくありません。