「60歳定年で完全に仕事を辞める」を実現するための貯蓄額
常用労働者30人以上を雇用する民間企業3,757社から回答を得た、厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』によると、定年制を定めている企業は94.4%。その年齢は、60歳が72.3%、65歳が21.1%となっています。
高齢化、長寿化に伴い、より長く働けるよう環境整備は進み、徐々に「60歳定年」→「65歳定年」に移行しているようですが、まだまだ「60歳」をひとつの区切りにしている企業が多いようです。
一方で、明治安田生活福祉研究所『50 代・60 代の働き方に関する意識と実態』によると、定年前正社員の8割が、定年後も「働きたい!」と希望。その理由は、60 代前半のトップが「日々の生計維持」、60代後半は「生活のハリ・生きがい」でした。
もし60歳で仕事を辞めるとなると、年金が支給されるようになる65歳までは、不労所得などがない限りは無収入。いわゆる年金の待機期間ですが、基本的に貯蓄を取り崩しながら生活するのがスタンダードです。
一方で、65歳で仕事を辞める人たちが「生活のハリ・生きがい」を求めて働くのは、実際にもらっているか、もらっていないかは別として、いつでも年金を手にする年齢に達し、お金に関する不安が和らいだからでしょうか。
こう考えると、お金の心配さえなければ、60歳定年で完全引退(収入を伴う就労をやめること)も夢ではないということでしょうか。
世帯主が60~65歳未満世帯(世帯人員:2.52人)の1ヵ月の平均支出をみていくと、28万7,126円。また勤労世帯ではありますが、同世代で住宅ローンを抱えている人の1ヵ月の返済額は平均10万0,309円。ローンを抱えていないのなら、5年間で1,722万円、住宅ローンも抱えているなら2,322万円が必要になる計算です。年金待機期間、働かない選択をするための、ひとつ目安といえそうです。
さらに65歳以上の夫婦(無職)世帯の1ヵ月の支出をチェックすると23万6,696円。仮に夫婦ともに100歳まで生きるとしたら9,941万円。厚生労働省によると元会社員が65歳から受け取れる平均年金額は、男性で月16万3,380円、女性で月10万4,686円。夫婦共働きであれば月26.8万円、夫婦片働きであれば月23万円ほどになります。さらに年金の手取りは額面の85~90%といわれているので、それらを加味すると、夫婦共働きであれば400万円、片働きであれば1,700万円程度の貯蓄があればいいという計算になります。
【60~64歳世帯と、65歳以上世帯の1ヵ月の平均支出】
◆消費支出:28万7126円/23万6,696円
(内訳)
・食料:7万9,865円/6万7,776円
・住居:1万9,979円/1万5,578円
・光熱・水道:2万5,959円/2万2,611円
・家具・家事用品:1万2,751円/1万0,371円
・被服及び履物:8,298円/5,003円
・保健医療:1万8,885円/1万5,681円
・交通・通信:3万4,008円/2万8,878円
・教育:2,554円/3円
・教養娯楽:2万9,403円/2万1,365円
・その他の消費支出:5万5,426円/4万9,430円
出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2022年平均)
※数値左より、世帯主60~64歳無職世帯の支出、夫婦ともに65歳以上の無職世帯の支出