現在、多くの会社が60歳定年制を採用していますが、近年の法改正で定年後、65歳、70歳まで働き続けられるような環境が整備されつつあります。60歳定年で引退するか、働けるうちは働き続けるか…絶対的な正解はありませんが、将来の年金額だけを切り取ると、「働き続ける」という選択に軍配が上がりそうです。詳しくみていきましょう。
60歳リタイアなら年金「月16万円」だが…〈70歳まで働く〉大卒サラリーマン、将来手にする“年金月額”に歓喜 (※写真はイメージです/PIXTA)

平均的な稼ぎの大卒サラリーマン…将来受け取れる年金額は?

日本企業の多くが「60歳定年制」を敷いていますが、2013年に施行した『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)』により、定年後も継続して働けるというケースが増えつつあります。その後の改正で、25年4月以降は65歳までの雇用確保が企業の義務として課されることになり、また70歳までの雇用確保も努力義務が定められたため、サラリーマンが働ける期間は大幅に延長されつつあります。

 

実際に定年を迎えたサラリーマンは、「引退する」「働き続ける」のどちらを選択しているのでしょうか。厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告』をみると、60歳定年制を敷く企業で21年6月~22年5月の間に定年を迎えた人は37万9,120人。うち、その時点で引退した人はわずか12.7%。9割近い人が、「働き続ける」という選択をしています。

 

働き続ける理由は人それぞれでしょうが、やはり代表的なのは「お金」の問題。大半の人は65歳から年金を受け取ることになりますが、それまでの5年間は無収入になります。それだけの期間、貯蓄を取り崩して生活していくことを想像すると、残高がどれだけあっても不安なはずです。そこで、「まだまだ働きます!」となる訳です。

 

引退せずに働き続ければ、多くの場合、定年前に比べれば水準が下がるものの「会社員」としての給与が継続しますし、さらには、将来受け取れる年金額を増やせるというメリットも享受できます。

 

日本の年金制度は、国民年金と厚生年金の組み合わせでよく「2階建て」と例えられますが、国民年金の加入期間は、現状、480ヵ月が上限となっているため、60歳ですでに加入期間が上限に達していれば、定年後に働き続けたとしても、老齢基礎年金は増えません。ちなみに現在、満額を受け取れるとすると国民年金の年額は79万5,000円です。

 

一方の厚生年金は、満70歳まで払い込みが可能。60歳以降も働きながら保険料を納め続けることで将来の受取額を増やせるのです。

 

老齢厚生年金の額は「①平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入月数」と「②平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数」を足すことで算出されますが、仮に大卒で37年間、会社員としてまっとうし、60歳で定年退職を迎えたとしましょう。その間、大卒サラリーマンの平均的な給与をもらい続けてきたとします。

 

【大卒サラリーマンの年収の推移】

20~24歳:3,468,100 円

25~29歳:4,565,100 円

30~34歳:5,381,200 円

35~39歳:6,307,300 円

40~44歳:6,855,000 円

45~49歳:7,460,300 円

50~54歳:8,240,500 円

55~59歳:8,348,900 円

60~64歳:5,750,900 円

65~69歳:4,614,800 円

70歳~:4,610,900円

 

出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』より算出

 

60歳で定年退職した平均的な大卒サラリーマンが65歳から受け取り始める年金額は、厚生年金部分が11万円ほど。満額の国民年金と合わせると、月16~17万円ほどというのが平均的な姿です。