「医者の給料」はどれくらいか
医師が実際にどれくらいの給与を得ているのか、データを紹介します。勤務医か開業医かによっても、診療科目によっても、開業医・院長か勤務医かにもっても異なります。
◆勤務医の年収
まず、勤務医については、厚生労働省が毎年発表している「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)の結果を紹介します。2022年分の調査によると、勤務医の平均年収(毎月の給与と賞与等の合計)は1,428万8,900円でした。
もちろん、これは年代・勤続年数に応じて異なります。[図表1]は、2022年分の賃金センサスの結果から、年代別の平均年収を計算してまとめたものです。
勤務医の場合、30代に年収1,000万円に到達し、40代後半がピーク(2,005万円)となっていることがわかります。
では、診療科目別ではどうでしょうか。少し古いデータですが、2012年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」の結果によると、診療科別の勤務医の平均年収は[図表2]の通りです。外科系、産科・婦人科が上位を占めています。
◆経営者(開業医・院長・病院長)の年収
診療所や病院を経営している「開業医」「院長」「病院長」はどうでしょうか。厚生労働省が2021年に発表した「第23回医療経済実態調査報告」によると、2020年の開業医、院長・病院長の平均年収は[図表3]の通りです。なお、個人事業主である開業医については給与の概念がないので、収入から必要経費等を差し引いた「損益差額」を記載しています。
また、参考までに、同調査における「勤務医」の平均年収の額も掲載しています。
これによると、開業医は2,424万6,000円、院長は2,729万9,869円、病院長は2,690万24円と、いずれも2,000万円を大きく上回っています。
また、勤務医の年収と比較すると、診療所(医療法人)では院長の年収が勤務医の年収(1,078万9,621円)の約2.5倍、一般病院では病院長の年収が勤務医の年収(1,467万8,978円)の1.8倍となっています。
ただし、個人で診療所を経営している開業医の場合、「損益差額」である2,424万6,000円は、給与に相当する額とイコールではありません。他に、以下のお金も賄う必要があります(厚生労働省「『勤務医の給料』と『開業医の収支差額』について」(2010年)参照)。
・診療所を建築するために借り入れた借金(元本)の返済
・診療所の老朽化に備えた建て替えや修繕のための準備金
・病気やけがにより休業した場合の所得補償のための費用(休業した場合に収入は激減する)
・老後のための退職金相当の積立て(サラリーマンのような退職金がない)
したがって、開業医の場合、実質的な給与相当額は上記数値よりも低くなります。
このように、一口に「医者の給料」といっても、経営者と勤務医とでは大きな差があることがわかります。しかも、開業医の場合、損益差額から、前述のように様々な費用を賄わなければならないのです。
以上からすれば、一概に「医者の給料は高い」ということは困難です。