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【コツ】子どもの「休みたい」を受け止める
園や学校、習い事もそうですが、子どもが「休みたい」と言うと、多くの親御さんは不安になってあせってしまうようですね。「このまま不登校になるのではないか」「何でも途中で投げ出す子になるのではないか」、こういったご相談をよく受けます。
こういうとき、「何事も続けるべきだ」とか「簡単に投げ出すべきじゃない」などと、とにかく頑張らせようとするご家庭がありますが、子育てにおける「べき論」はたいていの場合、危険です。
子どもが「休みたい」と言ったときに親がすることは、「休みたい」「いや、休むな」と押し問答をすることではなく、子どもの気持ちを受け止めて、今その子に何が起きているのかを寄り添い、想像してみることです。
クラスでトラブルがあったのかもしれません。
出された課題ができなくて、嫌になったのかもしれません。
プールや発表に気が進まないのかもしれません。
体が疲れている、という理由もわりとよくあります。
そして、小学生の場合は「理由はないけど休みたい」ということもあります。ずっと頑張ってきて気分的に疲れていたり、忙しすぎて少しボーっとしたくなったりするのです。
■「そういうこともあるよね」と共感してあげることが大事
こういうときに大事なのは、「学校には行くべきだ」と「べき論」を振りかざすことではなく、「そういうこともあるよね」と共感してあげることです。
特に真面目な子は、「学校に行きたくない自分はダメな子だ」と思って、自分で自分を責めてさらに苦しくなります。「そういうこともあるよね」「少し休んで元気になったらまた行こうか」などと心に寄り添って、安心を渡すことが大切です。
私自身の身のまわりでもよく見かけるシーンですが、親御さんが「まあ休みたいときもあるよね」という受け答えをするようになると、お子さんが「…やっぱり行く」と、いやにあっさり解決するなんてこともあります。
「理由なく休む→不登校、引きこもり」にはならない
よく、「一度休むとサボりぐせがつくのでは…」と心配する親御さんがいますが、そうやって休んだからといってサボりぐせに直結することはないということは、はっきりと言えます。ましてや、不登校や引きこもりにつながることも、そうそうありません。
逃げたいときは逃げたらいいのです。逆上がりができないから笑われたくないとか、みんなで合唱するのが嫌だとか、「嫌なことを回避したいから逃げる」というのは重要なことです。
というのは、苦痛からいったん逃げることで理性の力を発揮できるようになるからです。家で少し練習してから行けばいいやと考えられたり、「逆上がりができなくたって困らないよ、お母さんもできないし」という親の言葉を受け取れたりします。
「逃げる=あきらめる」ではありません。いったん距離を置いてどうするかを考えるための「体勢を整える時間」という理解の仕方を知っておくといいですね。
そういう選択肢もあると伝えたうえで、「大丈夫だよ」「少し休んでもまた戻れるよ」という言葉や気持ちを、お子さんに届けてください。
■「休んでも学校に戻れる子」「そのまま戻れなくなる子」の決定的差
休むことで「サボりぐせがついた」というような状態になってしまうのは、休んだことが原因ではなく、「ダメだったね」と評価されてしまった(自分でしてしまった)ことが原因です。「お前はダメなやつだなあ」とか「そんなことで休んでたら将来どうするの」など、「休む」ことに対してダメ出しをする大人がいると、深く傷が残り、少しストレスを感じたらもう立て直しが利かないようになるのです。
不登校や引きこもりの原因を一概に言うことはできませんが、ひとつ言えるのは「いつだって戻れるよ」「大丈夫だよ」ということを言ってもらえなかった、もしくは自分でそう思えなかった子どもは、普段の生活サイクルに戻るきっかけを失って戻れなくなってしまう、ということです。
ですから「明日は必ず行きなさい」ではなく、「休んで元気になったら行けばいいんじゃない?」くらいに言ってあげること、わが子の自ら立ち上がる力を信じて、待ってあげることが大切です。
仕事があって休めない親はどうしたらいい?
ここまで読んで、「そうは言っても、わが家は夫婦共働きだから、そうそう休ませてはあげられないのだけれど…」と感じられた方も多いと思います。
切実ですよね。そうした状況の場合、一番大切なことは親だけで頑張らないということです。もし頼れる祖父母がいるなら、子守りを頼みましょう。どんどん頼りましょう。
子どもの安全面は十分に考えたうえで、近所の方や地域の子育てサークル、塾や習い事の先生、ベビーシッターなど、外部のサポートも頼りましょう。子どもの成長の見守りには、「学校・家庭・地域の三位一体」の力が大事です。こういうときこそ「地域」の力を借りて、「家庭」でカバーできない部分を補えばいいのです。
どうしても頼るところがないときは、子どもに親の事情を伝えてみましょう。
「休みたい気持ちはわかったしそうさせてあげたいんだけど、今日と明日、お母さんはどうしても仕事を休めないんだ。あなたを家に一人というのも心配だから、今日は学校に行ってくれない? その代わり、明後日は休んで大丈夫だよ。それでどう?」
こんなふうに相談してみると、子どもは「自分の気持ちを受け止めてもらえた」と感じるので「じゃあ、今日は行ってみる」と勇気を出してくれることもあります。
小学校2、3年生以上で、普段から留守番の習慣が少しはある子なら、親が早退できる日には、1時間に1回電話で様子を尋ねるなど安全面・防犯面に十分配慮したうえで、家で一人で過ごさせてもいいと思います。
小川 大介
教育家・見守る子育て研究所® 所長
1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾SS-1を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。
受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスに定評があり、各メディアで活躍中(連載3本)。自らも「見守る子育て」を実践し、一人息子は電車の時刻表集めやアニメ「おじゃる丸」に熱中しながらも、中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。
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