【前回記事】恐ろしい…子どもの「学校休みたい」を〈もう学校へ戻れない〉に追い込んでしまう“親の言動”
【コツ】「なぜ」の正しい使い方を知る
これまで数多くのご家庭をお手伝いした中で気づいた、親子関係を劇的に改善できる秘策がひとつあります。それは、「なぜ」という言葉の使い方を変えることです。
たとえば、「なぜ」「なんで」をこんなふうに使っていないでしょうか。
◆「なぜ忘れたの?」
◆「なんで間違っちゃうわけ?」
◆「なんで言われてすぐにやらないの!」
一般的な使い方に思えますよね? でも、この使い方をしている限り、お子さんが自分で学べるようにはなかなか育ちません。子どもの側に立てば、自分が失敗したときに「なぜ?」と言われると、最終的には「ぼくが(私が)ダメな人間だからです」としか答えようがないからです。
親の側は、「次は忘れないようにしようね」「正しくやればできるはずだよね」というメッセージを伝えているつもりで「なぜ〜できないの?」と言うのですが、子どもからすると「お前はなんてダメなやつだ」と言われているのに等しいのです。「なぜ」は使い方を誤ると、凶器のような言葉になるということを知っておきましょう。
「なぜ」は“うまくいったとき”にこそ使う
それでは「なぜ」はいつ使えばいいかというと、何かがうまくいったとき、できたときです。今まで跳べなかったハードルを跳べたり、テストの成績がよかったりしたときに、次のような使い方をします。
◆「なんで今回は跳べたの?」
◆「なんでうまくいったの?」
これは、「うまくいったのは理由があるよね」「あなたの努力や工夫があるからだよね」ということに光を当てる効果があります。こういう「なぜ」には、子どもは「だって〜したから」と自分がうまくいった理由を答えることができます。
うまくいった理由が言えるなら、同じようにすれば次回もうまくいくということです。「なぜ」は使い方次第で子どもの自信とやる気につながるのです。
うまくいかなかったときは「なぜ」でなく「何」を使う
では、子どもの失敗を注意するときにはどうすればいいかというと、「なぜ」の代わりに「何」を使います。
◆「宿題やってないね、何があったの?」
◆「練習したのにできてないのは、何があったの?」
こう問われると、子どもも「準備はしてたんだけど、遊びに行って忘れちゃった」などと「出来事」として説明できます。理由がわかれば、「じゃあ今度からは、先に半分終わらせてから遊ぶようにしようか」などと教えてあげることができます。
子ども自身を責める「なぜ」ではなく、「何があったの?」と、事柄に意識を向けた聞き方をすることで、次につなげていくのです。
親世代は「なぜ」の使い方を教わる機会がなかった
ここまで読んで、「今までしょっちゅう『なぜ』で責めていたな…」と不安になる方がいらっしゃるかもしれませんが、「なぜ」の使い方を教わる機会がなかっただけなので、仕方がないことです。
日本人は人に迷惑をかけてはいけないと考える傾向が強いので、「なんでそんなことしちゃったの?」と責める言い方をしやすいのでしょうね。
親御さん世代も「なぜ〜できないの?」と言われて育っているので、すぐにパッとは変えられないでしょう。「なぜ」の使い方をまずは知識として持ち、少しずつ意識的に使えるようにしていけばよいと思います。
小川 大介
教育家・見守る子育て研究所® 所長
1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾SS-1を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。
受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスに定評があり、各メディアで活躍中(連載3本)。自らも「見守る子育て」を実践し、一人息子は電車の時刻表集めやアニメ「おじゃる丸」に熱中しながらも、中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。
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