サラリーマンが給与アップを実現する方法の1つに、「出世する」というものが挙げられます。見事役職者となって給与アップを実現すれば、将来受け取る年金額も増えることになります。実際、平社員→係長→課長→部長とステップアップするにしたがって、給与はどれほど増えるのでしょうか。統計を基に詳しくみていきましょう。
重い責任は負いたくない…「生涯平社員」のつもりだった大卒サラリーマン、“出世組同期”との〈収入格差〉に考えを改める (※写真はイメージです/PIXTA)

サラリーマン引退後も…最期まで続くエリート社員と平社員の収入の差

さらに、サラリーマン時代の給与の差は、65歳から受け取れる年金額に跳ね返ってくることも見逃せません。元会社員が受け取れる老齢厚生年金を構成する「報酬比例部分」は、現役時代の給与を基に計算されるためです。

 

「報酬比例部分」は、2003年3月以前は①「平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月以前の加入月数」、2003年4月以降は②「平均標準報酬額(標準報酬月額+標準賞与額)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」によって計算します。

 

厚生年金の基本となる平均標準報酬額として、順調に出世したサラリーマンの「65万円」、平社員の「56万円」を基に計算すると、出世したサラリーマンが受け取る年金額が厚生年金部分が13万1,000円、満額の国民年金と合わせて月20万円ほどであるのに対し、平社員の場合は厚生年金部分11万3,000円、国民年金との合算で18万円ほど。

 

両者の差は月2万円ほどに過ぎず、「なんだ、その程度か」と考える人もいるでしょう。しかし、男性の平均余命を考慮すると、生涯を通じた年金受給額には「450万円」もの差が。生涯賃金で6,000万円もの差を付けられたエリート同期との収入の差は、最期まで埋められない公算が大きそうです。

 

管理職になったとしても、給与に見合わぬハードワークを要求されて心身に不調を来すようなことがあっては本末転倒。志向するライフスタイルもさまざまでしょうから、一概に「サラリーマンなら全員出世をめざすべき」と言い切れるものでもありません。

 

とはいえ、あくまでも平均値をみる限りでは、収入に関しては「出世組」に分があることはたしか。

 

収入アップをめざして転職を検討する人も多いでしょうが、厚生労働省の調査によれば、転職で給与が「増加した」人は約4割にとどまります。同じく約4割の人が給与が「減少した」経験をし、うち1割は「30%以上減った」としています。少しでも給与に不満を抱いているのであれば、「一発逆転の転職」に望みをかけるよりも、コツコツと実績を積み上げて「出世」をめざすほうが、収入アップを実現できる可能性は高そうです。