平均寿命は延び、人生100年時代も絵空事ではなくなってきた昨今。定年後も希望すれば働ける環境が整いつつあります。とはいえ年金の受給が始まると、徐々にフェードアウトし、悠々自適な老後を満喫するというのが定番です。しかし「一生働く」と覚悟を決めている人もいるようです。みていきましょう。
手取り月16万円…「いつか正社員になれますよ」を信じた〈50代の非正規男性〉の末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

正社員登用ありを信じて20年…もう少し早く方向転換したなら

ーー就業規則を確認したら、70歳までは働けるらしい

 

そう安堵したという50代男性。高校を卒業してから、ずっと非正規として働き、現在に至るといいます。いつまで働けるかを意識するにはまだ早いのではと感じますが、「働けるうちは働かないと」と男性。月収は月20万円で、手取りは16万円ほど。家賃月5万円のアパートに20年以上も住んでいるといいます。昨今の物価高で生活は苦しくなるばかり……このような状況を呟くと、「正社員になろうと思わなかったのか」「低年収は自業自得」などと、叩かれることもあるのだとか。

 

「正社員登用ありという言葉を信じて頑張っていたころもあった」と男性。その会社では20代から40代目前まで働いていたといいますが、結局正社員になれずその道を諦めたといいます。「早めに方向転換ができていたら、人生、変わっていたんでしょうかね」

 

現在、契約の更新によって同じ企業で5年を超えて働いた場合、希望すれば期間の定めのない雇用に切り替えられるよう企業に義務付ける「無期転換ルール」があります。ただ、権利発生の直前に雇い止めが行われるなど、トラブルも頻発。そこで厚生労働省は労働基準法施行規則5条を改正し、2024年4月から契約期間や更新回数の上限の有無とその内容の事前明示が義務となります。

 

一生働き続けるしかないと覚悟を決める、50代非正規男性。仮に高校卒業以来、ずっと非正規社員の平均給与を得てきたと仮定し、年金支給の直前まで厚生年金にも加入できていたら、どれくらいの年金がもらえるのでしょうか。単純計算ではありますが、厚生年金は月6.5万円ほど。国民年金と合わせると、月13万円程度になります。保険料などが引かれると、月12万円くらいでしょうか。貯蓄が十分でない限りは、仕事を辞めることは難しいでしょう。

 

ただ65歳以降も働き続けるなら、利用したいのが「年金の繰り下げ」。65歳から受け取る年金を66歳から75歳まで繰り下げて増額した年金を受け取れる制度です。1ヵ月繰り下げるごとに、年金は0.7%ずつ増えていきます。月13万円の年金は、70歳で受け取り開始とすると月18.46万円、75歳なら月23.9万円になります。また厚生年金は70歳まで加入可能(70歳以降は任意で厚生年金保険への加入が可能)。その分の増額も期待できます。

 

一生、働くしか……そう考えている人には、少しは希望の光になるのではないでしょうか。