前回は、不動産の基礎資料の収集について解説しました。今回も引き続き、基礎資料にはどんなものがあるのか、そしてそれらの活用方法について見ていきましょう。

地図関連は一つの資料だけでは不十分

まずは、前回に引き続き、財産の「棚卸」に必要な基礎資料を見ていきましょう。

③住宅地図、ブルーマップ

不動産の位置を確認するために必要なのが住宅地図やブルーマップです。ブルーマップとは住宅地図の情報の上に、一筆ごとの土地に登記所が付す地番や公図に記載されている土地の番号をブルーで記載したもので、さらに都市計画の用途地域、建ぺい率、容積率などの情報も併せて記載されています。ただし、ブルーマップの情報はすべてを網羅しているわけではなく、永久不変のものでもないので、併せて役所での調査も必要になります。


④公図

公図とは、法務局に備え付けられている土地台帳付属地図のことを言います。公図は必ずしも精度は高くありませんが、これを見ることで土地の位置や形状を知ることができます。専門家が現地調査に際して必ず持参するものです。


⑤登記簿謄本

不動産登記簿とは、言ってみればその不動産の履歴書のようなものです。表題部、甲区、乙区に分かれており、表題部には、

●その土地の所在地:住所

●地番:住居表示の番号とは異なり、登記所が管理のために一筆ごとに付けたもの

●地積:土地の面積のこと。ただし、登記簿上の面積は実際の面積と異なっている場合も

●地目:宅地、田、畑、山林といった土地の地目

など、その土地に関する情報が記載されています。

 

また、甲区には所有権に関しての記載があります。現在の所有者だけでなく、過去の所有者についても記載されており、その土地がどのような経緯を経てきたのかがわかるようになっています。乙区には抵当権や地上権、賃借権など、所有権以外の権利についての記載がされています。


登記簿は、相続税の財産評価を目的とした不動産の調査で重要な役割を果たします。これを見れば、土地の所有者や所有権の持ち分、地上権、地役権の設定の有無、所有者の履歴、地目の変更もわかります。


財産評価につながるところでは、たとえば過去に有害物質の使用が推定される事業者の所有であったかどうか、農地から宅地に造成されたのがいつで、その後どのような用途に使用されていたかなどを知ることができるのです。これも現地調査には欠かせないものです。

基礎資料から土地の全体像を把握したら4つに分類

これまでご説明してきた資料のほかにも、不動産の調査にあたっては地積測量図、建物図面、都市計画図、都市計画道路予定図、土地調査図、道路平面図、上下水道・ガスなど、必要に応じてさまざまな資料が必要になります。そして、基礎資料を入手して所有する土地の全体が把握できたら、次の4種類に分けていきます。

 

【A自用地】自己利用する土地、遊休土地、駐車場として貸している土地、使用貸借地など

【B貸宅地(底地)】借地権付きの土地

【C貸家建付地】アパート敷地、賃貸マンション敷地

【D使用貸借地】家族、親族など本人以外の建物があり、賃料の授受がないもの

 

この分類で、所有する土地の大まかな仕分けができたことになります。これは、のちのちどの土地を残してどれを処分すべきか、また円滑な相続に向けて対策を取る場合、どの土地から優先的に行えばいいかといったことの判断基準となります。

本連載は、2013年11月1日刊行の書籍『相続トラブルの99%は不動産が原因』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続トラブルの 99%は不動産が原因

相続トラブルの 99%は不動産が原因

澁谷 一夫

幻冬舎メディアコンサルティング

親から受け継いだ財産を、よりよい形で次の世代に残す。それが相続本来の目的であるはず。 しかし、自身の財産、とくに不動産のことをよく知らないがため、相続人の間で財産を奪い合う。また、無理な対策を行い、財産を不良資…

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