前回は、相続にまつわるトラブルの種を排除する方法についてご紹介しました。今回は、財産の棚卸の際に不可欠な、不動産の基礎資料の収集について見ていきます。

すべては基礎資料の収集から始まる

財産の棚卸をする際、最初に行うのが不動産の基礎資料の収集です。基礎資料はこれから始まるすべての棚卸の元になるものであり、これがなくては棚卸そのものが成り立ちません。

 

不動産の棚卸にあたって必要な基礎資料には、①固定資産税の通知書、②名寄せ帳、③住宅地図、ブルーマップ、④公図、⑤登記簿謄本などがあります。今回は、①固定資産税の通知書と②名寄せ帳について見ていきましょう。

 

①固定資産税の通知書

さまざまな場所に先祖伝来の土地を多数所有しているような場合、どこにどのような土地を持っているのか、現在のご当主ですら認識できていないことがあります。どれだけの不動産があるかを確認するために最初に使うのが、固定資産税の通知書です。


固定資産税の通知書には「明細」という項目があり、所有する土地の詳細がわかるようになっています。これは毎年5月に各自治体(市区町村)から送られてくるものなので、入手するための手間はかかりません。その点では大変便利なのですが、ここから得られる情報だけではどうしても足りない場合があります。というのも、固定資産税の通知書には課税されている土地についてしか記載がない場合があるからです。


また、固定資産税の通知書は自治体ごとに発行されるため、明細の記載内容に統一性がありません。課税されている土地についての記載しかしない自治体もあれば、課税の有無にかかわらず所有する土地のすべてについて記載している自治体もあります。

便利だが活用は意外に難しい「名寄せ帳」

最近では課税額がゼロのものも記載している自治体が増えてきましたが、それでも100%記載されているわけではありません。したがってこれだけでは所有する土地のすべてを把握することができないので、自身が所有する土地を調べるためにもう一つ名寄せ帳というものを使って確認することになります。

 

②名寄せ帳

名寄せ帳とはある人が持っている不動産の一覧表のことを言います。ただし自治体ごとの発行になるため、名寄せ帳で所有している土地を明らかにすることができるのは、同一自治体内の土地に限られています。ですから、いろいろなところにたくさんの土地を持っている人は、所有している土地すべての自治体から名寄せ帳を取らなければなりません。


また、名寄せ帳は自治体ごとに書式がバラバラであるというデメリットもあります。自治体ごとに記載の仕方が統一されていないのです。たとえば、地目や利用区分の書き方について言えば、「宅地」とわかりやすく漢字で書いているところもあれば、「035」というふうに独自の番号になっているところもあります。


多くの自治体の名寄せ帳ではコード番号が使われていますが、これも共通したものではなく、それぞれの自治体で独自のものを使用しています。複数の自治体から集めた名寄せ帳を基に、所有する土地すべてのデータをまとめるためには、最初に各自治体の名寄せ帳を読み解く作業が必要になります。


この作業はかなり煩雑ですから、複数の自治体に多くの土地を持っている人は、まずは信頼できる土地活用の専門家にデータのとりまとめの段階からお願いしたほうが、後の作業もスムーズに進むのではないかと思います。まずこのことを頭の片隅にとどめておいてください。

 

一方で、名寄せ帳には固定資産税の通知書とは異なり、課税されていない土地についてもすべての自治体内の所有地が記載されているというメリットがあります。たとえば神社の境内のようなところは非課税となるので、自治体によっては固定資産税の通知書には載っていませんが、名寄せ帳にはきちんと出ているのです。

本連載は、2013年11月1日刊行の書籍『相続トラブルの99%は不動産が原因』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続トラブルの 99%は不動産が原因

相続トラブルの 99%は不動産が原因

澁谷 一夫

幻冬舎メディアコンサルティング

親から受け継いだ財産を、よりよい形で次の世代に残す。それが相続本来の目的であるはず。 しかし、自身の財産、とくに不動産のことをよく知らないがため、相続人の間で財産を奪い合う。また、無理な対策を行い、財産を不良資…

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