「月給」は同額でも“基本給”に大きな差…勤め先はまさかのブラック企業?
毎月会社から配られる給与明細。最近ではペーパーレスの流れから電子化される企業も多いようですが、しっかりと目を通せば、自身の給与の構造がわかるはずです。
たとえば「基本給:25万円、住宅手当:4万円、通勤手当:1万円」のA社員と、「基本給:10万円、固定残業代:20万円」のB社員。2人の月収はともに30万円です。
所定内労働時間169時間と仮定し、厚生労働省HPで『最低賃金の対象となる賃金』として紹介されている方法で2人の給与を時給換算してみると、A社員の時給は1,715円であるのに対し、B社員は591円。
23年10月から東京都内の最低賃金は1,113円とされていますので、B社員は最低賃金以下で働いていることになります。
また残業代は基本的に「時給×1.25」ですから、A社員は1時間当たり2,143円、B社員は同738円と、1時間で1,405円もの差が付くことになり、さらにボーナスが基本給の3ヵ月分だとしたら、A社員75万円、B社員30万円と、45万円もの格差が生じることになるのです。
このように基本給を基準にして考えると、残業代やボーナス、さらには退職金などに大きな差が生じることは明白。
基本給を低く設定することは、企業にとって固定費となる人件費を削減できるため、大きなメリットです。固定残業代を付けたり、インセンティブの割合を増やしたりして、基本給を異様に低く設定するのは、いわゆる「ブラック企業」の常套手段。
たとえば「基本給10万円+みなし残業代15万円」という企業は、「しっかり残業代を払っています」とアピールしているに過ぎず、上にみたとおり基本給から時給換算すれば最低賃金以下で従業員を働かせている企業ということになります。こうした企業では、たとえ「みなし残業」以上の時間の残業をこなしたとしても、超過分が支払われる可能性は低いでしょう。
「毎月の手取り額にそれほど不満はないけれど」と思いつつ、給与の内訳を詳しくみてみると「調整手当」や「繁忙手当」など、よくわからない「手当」の割合が多く、基本給はうんと低く抑えられていた……という事実が発覚する可能性もあるでしょう。
基本給が低いということは、それを基に算出される残業代やボーナスも低くなりがちだというのは上のB社員の事例にみたとおり。「これまで身を粉にして働いてきた会社が、実は従業員を安く買い叩くことに余念がない会社だった」「うち、ブラックかも」。給与明細からは、そんな衝撃の事実が垣間見えるかもしれません。