大企業なら約2,000万円、中小企業なら約1,000万円ともいわれる退職金。その使い道として大半の人が「貯蓄」を選択していますが、「住宅ローンの返済」に充てる人も少なくありません。昨今の晩婚化の影響もあり、住宅の購入年齢も後ズレしていることから、今後は定年退職時点でも相当額の住宅ローンが残っている、というケースが増えることが予想されますが、退職金の大部分を住宅ローン返済に充てるという選択はアリなのでしょうか。詳しくみていきます。
60歳・元中小企業サラリーマン、勤続38年の末に得た「退職金1,000万円」…〈住宅ローン返済〉に充てる選択はアリか? (※写真はイメージです/PIXTA)

大卒・総合職のサラリーマン…勤続38年で受け取る退職金額は?

老後の生活を考えるにあたり、退職金に大きな期待をかけているサラリーマンは少なくないでしょう。

 

ただ、最近では退職金制度そのものを廃止する企業が増えているといいます。退職金は就業規則に定められた福利厚生に過ぎず、制度を取り入れるかどうかは各企業の判断によるのです。また退職金制度が経営上の負担になっているケースも多く、支給額の算定方式を転換する企業も珍しくありません。

 

制度を変更して退職金の支給額を減らすことは、労働契約法第9条に規定される「労働条件の不利益変更」に該当するため、本来は認められません。ただ、同法10条では変更後の内容が「合理的なもの」である限りは使用者が一方的に就業規則を変更することも許容されています。とはいえ、会社が一方的に不利益な変更を決めてしまえば従業員から大きな反発を招くことになりますから、急に退職金制度が撤廃されるということは考えづらいでしょう

 

中央労働委員会の『令和3年賃金事情等総合調査(確報)』をみると、退職金制度を導入している企業の割合は89.7%に上ります。およそ9割のサラリーマンが退職金を受け取ることになるようですが、その金額は、一体どのくらいなのでしょうか。

 

日本経済団体連合会の『2021年9月度退職金・年金に関する実態調査』によると大卒サラリーマン(総合職・勤続38年)で平均2,243万3,000円。一方、東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)』によると、中小企業で定年退職まで勤め上げた大卒サラリーマンが受け取る退職金は1,091万8,000円。

 

大企業なら2,000万円ほど、中小企業ならその半分程度、というのが受け取れる退職金の目安になるといえそうです。