わが子を伸ばすなら「習い事をいくつもさせる」より「ボーッとする時間を確保する」べきワケ【頭のいい子の親がやっている子育て】

わが子を伸ばすなら「習い事をいくつもさせる」より「ボーッとする時間を確保する」べきワケ【頭のいい子の親がやっている子育て】
(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもの興味に応じた適切な経験を与えるのはいいことです。しかし、親から見て「教育によさそうなもの」をあれこれと与えられている子どもがみんな、成績優秀で学力の伸びが素晴らしいかというと、意外とそうでもありません。むしろ伸び悩み、苦労している子が多いのが現実だといいます。教育家・小川大介氏の著書『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、「与えすぎないこと」の重要性について考えていきましょう。

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なぜ「たくさん与えられている子」が伸び悩むのか?

習い事をさせたり、イベントに連れて行ったり、よさそうな教材を買い与えたりと、子どもにさまざまな体験をさせることは、一見素晴らしい関わりに思えます。それなのになぜ、子どもが伸び悩んでしまうのでしょうか。

 

その理由は、「体験したこと」を子どもが身につけるプロセスから説明することができます。

子どもは、体験したことを「ボーッとしている時間」に吸収する

体験したことが「自分のもの」になる、つまり、体験が身につくときの子どもはどんな様子かと言えば、たいていの場合、親から見れば「ボーッとしている状態」です。

 

リビングでゴロゴロしながら「今日の英語のレッスンで教えてもらった歌は面白かったな」と思い返したり、ぼんやりとテレビを見ながら「あっ、この泳ぎ方、今日習った!」と発見したり。こういった時間の中で、子どもは体験したことを自分のものにしていきます。これが子どもなりの「学習」の仕方です。

 

子どもは、体験したことを「自分のもの」にするまでに時間がかかります。習い事の時間だけでは、子どもは習ったことを身につけられないのです。

 

ですから、1日のうちに習い事をいくつも掛け持ちさせたり、日替わりでさまざまな習い事に通わせたりすると、頭の中がぐちゃぐちゃのまま次の予定に向かうことになります。忙しすぎると、習ったことを思い出しながらボーッとする時間が取れず、習ったことが身につかないのです。

 

そう考えると、習い事は本人の気持ちが乗るものだけに絞るほうが効果的、という話も納得していただけるでしょう。子どもの時間の中にフリータイムが多ければ多いほど、子どもは自由に考えを巡らせることができます。その間に体験したことをじっくりと確認し、吸収していくのです。

 

ですから習い事は「一点豪華主義」。必ずしも「ひとつだけ」でなくて構いませんが、ひとつかふたつ、本人の気持ちが乗るものだけにしたほうが、子どもの意欲は伸ばしやすいでしょう。

 

イラスト:寺崎愛 小川大介著『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)
イラスト:寺崎愛
小川大介著『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)

忙しいと「心」が動かなくなる⇒習い事の時間が“虚無”になる

忙しすぎることのデメリットは、ほかにもあります。

 

忙しいと、目の前のことで精いっぱいになってしまい、「今日はダンス教室の日だ!」と楽しみにしたり、「今日はダンス教室に行くの嫌だな」とおっくうに感じたりといった「心の動き」がなくなってくるのです。

 

心の動きがなくなると、習い事は言われたことをただこなすだけの時間になってしまいます。すると上達もしませんし、習い事で得た経験をほかに生かすこともなくなります。

 

プラスの感情にせよマイナスの感情にせよ、習い事のことで心が動くのは、とても大事なことです。子ども自身が、習い事を「自分のこと」として考えている証拠だからです。

 

楽しみにしているならともかく、「行きたくないな」とネガティブな言葉を発していると心配になる親御さんもいるかもしれません。よほど苦痛に感じているようなら「つらいならやめてもいいんだよ」と聞いてあげることも必要ですが、そう言いながらもやめたがらないのであれば、「そう、嫌なんだ」とお子さんの気持ちを認め、見守ってあげましょう。たまたまテンションが下がっている時期なのかもしれません。

「時間の主導権」を子どもに渡す

私がお伝えしたいのは、「時間の主導権」を子どもに渡そうということです。

 

子どものことを思うあまり、あれもこれもと詰め込んで、子どもが今日1日の体験を自分のものにする時間を奪っていないでしょうか。

 

子どもが体験したことを「自分のもの」にしていくプロセスは、親の目からはボーッとしているようにしか見えず、わかりづらいものです。しかし子どもにとっては大切な時間です。

 

自らの「好き」や「得意」を十分に発揮できている子は自分の時間を与えられている子です。

 

「空いている時間を何かで埋める」という発想は捨ててしまいましょう。そして、子どもが体験を自分の中に取り込んでいく様子を、優しく見守ってあげましょう。親が「あれもこれも」と考えてしまうときの歯止めになるはずです。

 

 

小川 大介

教育家・見守る子育て研究所® 所長

 

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾SS-1を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。

受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスに定評があり、各メディアで活躍中(連載3本)。自らも「見守る子育て」を実践し、一人息子は電車の時刻表集めやアニメ「おじゃる丸」に熱中しながらも、中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。

 

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※本連載は、小川大介氏の著書『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て

頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て

小川 大介

KADOKAWA

親が頑張りすぎないほうが、子どもは伸びる! 中学受験のプロとして活躍し、教科指導スキルにコーチング技術や心理療法的なアプローチをとりいれた指導方法で灘や東大寺、開成、筑駒、麻布など最難関中学に教え子を多数合格…

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