「習い事はどれを選ぶのが正解なんですか?」…教育家・小川大介氏の“ハッとする回答”【頭のいい子の親がやっている子育て】

「習い事はどれを選ぶのが正解なんですか?」…教育家・小川大介氏の“ハッとする回答”【頭のいい子の親がやっている子育て】
(※写真はイメージです/PIXTA)

親から見て「教育によさそうなもの」をあれこれと与えられている子どもがみんな、成績優秀で学力の伸びが素晴らしいかというと、意外とそうでもありません。むしろ伸び悩み、苦労している子が多いのが現実です。習い事は「豪華一点主義」。必ずしも「ひとつだけ」でなくて構いませんが、ひとつかふたつ、本人の気持ちが乗るものだけにしたほうが、子どもの意欲は伸ばしやすいでしょう。教育家・小川大介氏の著書『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)より一部を抜粋し、習い事選びのポイントを紹介します。

<前回の記事>わが子を伸ばすなら「習い事をいくつもさせる」より「ボーッとする時間を確保する」べきワケ【頭のいい子の親がやっている子育て】

習い事は「何をさせるか」よりも「子どもが夢中になれるか」

習い事は詰め込みすぎず、「一点豪華主義」でいい。

 

このお話を子育てセミナーですると、質疑応答の時間に「ならば、習い事はどれを選ぶのが正解なんですか?」という質問をよく受けます。

 

習い事は、小さいお子さんをお持ちの親御さんにとって関心の高い話題です。それだけに、気をつけないと、親から子どもへの「押しつけ」が生まれてしまいやすいものでもあります。

「この子に何が向いているか」は誰にもわからない

私はかつて、衝撃的な面談をしたことがあります。面談にいらしたのは、小学2年生の子を持つ親御さん。裕福なご家庭です。相談内容はこうでした。

 

「うちの子にはサッカーとバイオリンを習わせている。どちらもそれなりの実力を持っている。でも中学受験のために勉強もさせたい。サッカーか、バイオリンか、受験か。どの道を選ばせるのがベストか、先生に決めてほしい」

 

私はあっけに取られ、「それはお子さんの『好き』や『得意』の方向性を探りながら、ご家庭の中で決めるのがいいと思いますよ」とお答えすると、「でも、投資と回収の観点から見れば、無駄なことをやらせたくない。うちの子に向いていて、将来に役立つ方向に全投資したい」という言葉が返ってきたのです。

 

ちょうど2008年ごろのことです。フィギュアスケートの浅田真央さんやゴルフの石川遼さんなど、スポーツの分野で若くして才能を開花させる人が目立ち始めた時期で、メディアも「真央ちゃんや遼くんのような子に育てるには?」という特集をたくさん組んでいました。この親御さんも、そのような情報に刺激されたのかもしれません。

 

メディアに影響される気持ちはわからなくもありませんが、子どもを投資の対象のように見ることに、共感できなかったのを覚えています。

 

はっきり言えば、「この子に何が向いているか」なんて、誰にもわかりません。親にできることは、子どもをよく観察して「あなたはこれが好きだよね」「あなたはこれが得意だよね」というように、「好き」や「得意」を見つけ、本人に教えてあげること。それ以上でもそれ以下でもありません。

 

得意だからと本人の意思を無視して「この道で生きていきなさい」と押しつけてしまうと、子どもが主体的に生きる力を弱らせてしまいます。

習い事そのものよりも「子どもが夢中になる体験」に価値がある

子どもが就学前や小学校低学年だと、親が希望する習い事に通わせる場合が多く、それゆえ過剰に熱を入れてしまうのかもしれません。

 

ここで重要なのは、「習い事に通わせる」というプロセスと「だから才能が伸びる」という結果を結びつけないことです。「音楽教室に通わせる。だから音楽の才能が伸びる」。このようにプロセスと結果を直結させてしまうから、「投資・回収」という思考にはまってしまうのです。

 

習い事を通して何を感じ取り、どう生かしていくかは子ども次第。自分なりにやってみたという経験を得られることが大きいのであって、習い事の内容自体はさほど問題ではありません。結果的に好きで長続きすれば、それは子どもにとって素敵なことであるというだけのことです。

 

親はスイミングやピアノ、英語など「ことがらそのもの」に価値があると思いがちなのですが、いくら「教育によい」「これからの時代に必須」と言われているものでも、その子が興味を示さず惰性で取り組んでいたら、得られるものは少ないのです。価値があるのは「ことがら」よりも「子どもが夢中になる体験」です。

 

ですから、習い事は子どもがハッピーになるものを選びましょう。

 

習い事に通わせることによって得るものがあるとしたら、それは習い事が与えてくれるのではなく、習い事をする子どもの感じ取り方にかかっているのです。

 

イラスト:寺崎愛 小川大介著『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)
イラスト:寺崎愛
小川大介著『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)

一方、「習い事をしない」ことのメリットも大きい

もしかしたら、習い事をさせていないことに不安を覚える親御さんもいるかもしれませんね。でも、心配はいりません。習い事をしないことによって、親子で一緒に過ごす時間が増えるというメリットもあるのです。

 

習い事があったら、練習やおさらいに最低でも週2時間は取られるでしょう。その2時間、一緒にテレビを見たり、おやつを食べたりできるんです。素敵なことです。

 

わが家でも、スイミングをさせてきたぐらいで、英語もプログラミングもピアノもさせていません。「まったり」することが大好きな息子は、妻と一緒にテレビドラマを見たり、アニメキャラクターのものまねをし合ったりして楽しそうに過ごしています。

 

 

小川 大介

教育家・見守る子育て研究所® 所長

 

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾SS-1を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。

受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスに定評があり、各メディアで活躍中(連載3本)。自らも「見守る子育て」を実践し、一人息子は電車の時刻表集めやアニメ「おじゃる丸」に熱中しながらも、中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。

 

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※本連載は、小川大介氏の著書『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て

頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て

小川 大介

KADOKAWA

親が頑張りすぎないほうが、子どもは伸びる! 中学受験のプロとして活躍し、教科指導スキルにコーチング技術や心理療法的なアプローチをとりいれた指導方法で灘や東大寺、開成、筑駒、麻布など最難関中学に教え子を多数合格…

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