物件価格の2割の頭金を用意しても、「60歳完済」は難しい
上にみた平均像から、月の返済額を逆算してみます。
4,700万円の注文住宅購入にあたり、頭金として物件価格の2割、940万円を入れ、3,760万円・32年返済の住宅ローンを活用して購入したとします。返済方式は元利均等、金利は0.5%とすると、利息分は309万5,084円、月々の返済額は10万5,979円。年間で127万1,748円で、年収(540万円)の25%以内に収まることがわかります。
仮に頭金ナシ、全額ローンで4,700万円の物件を購入したとすると、利息分は386万9,824円、返済額は月々13万2,437円、年間で164万9,376円。年収に対する返済負担率は30%を超え、片働きではかなり苦しい水準になります。
毎月10万円前後の返済を30年以上続けることを見据えてマイホームを購入するというのが、直近の日本でマイホームを手に入れた人の平均的な姿ですが、住宅購入の年齢が40歳前後ということを考えると、「完済時期」に不安が残ります。
仮に40歳時に30年返済のローンを利用したとなると、ローン完済は70歳。多くの人が現役を退き、年金収入のみで暮らしている年齢です。では、現役時代のうちに完済できるようなプランを組むとなると、月々の返済負担はどうなるのでしょうか。上と同じく、物件価格の2割に相当する頭金を入れて、3,760万円の借入を行って注文住宅を購入するケースを考えてみましょう。
60歳のときに完済すべく20年のローンを利用した場合、月々の返済額は16万4,663円。30年ローンを利用した場合に比べ、月々の返済額は6万円弱も増えることとなり、返済負担率も36%強。手取り25~26万円という平均的な給与水準では、絶望を感じざるを得ない返済額となります。
それでは、自己資金の額を倍増し、物件価格の4割・1,880万円を頭金として用意した場合はどうでしょう。この場合、借入金額は2,820万円。ほかの条件を上記のプランと揃えると、利息分は149万9,241円。返済額は毎月12万3,497円で、年間148万1,964円。返済負担率は27.4%となり、少々負担感はあるものの、毎月なんとか返していけそうな水準です。
上にみたとおり、国土交通省の調査では、注文住宅購入者が用意する平均的な自己資金は940万円ですから、その2倍というのは思わずしり込みしてしまう数字といえそうです。できるだけ多くの自己資金(頭金)を投入しておくのは、将来にわたる利息負担と毎月の返済負担を減らす上で有効な手立てとなりますが、その資金を用意している間にライフスタイルが変わり、マイホームの買い時を逃してしまうことも。
買い時を逃してしまうくらいなら、「プレミアム」のついた新築物件には早々に見切りをつけ、上記調査で平均「3,025万円」とされる中古戸建も視野に入れてみる必要があるかもしれません。
どんな物件を購入するにしても、ローン完済時の年齢や今後の収入の推移、将来的に物件を売却する可能性がある場合には不動産市場の動向も気にしながら、現役時代に毎月住宅ローンを返済しつつ、同時に定年退職後の生活に欠かせない老後資産の形成も行っていけるようにプランを練ることが重要です。