年金の繰り下げ受給、最大「84%増額」のすごいメリット
厚生労働省の調査によると、国民年金受給者の平均年金受給額は、老齢年金で月額5万6,479円。満額である6万6,000円より月1万円ほど少なくなっている。
厚生年金受給者の平均年金受給額は、老齢厚生年金で月額14万5,665円。男女別で65歳以上の平均は、男性65歳以上が月16万9,006円。女性65歳以上が月10万9,261円。老齢年金は原則65歳から受け取れるが、元・サラリーマンなら、だいたい年に200万円程度が年金受給額となる。
年金(老齢年金)は、希望すれば60歳から65歳になるまでの間、繰り上げ受給ができるが、逆に、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間、繰り下げ受給することもできる。
いまも多くの企業が60歳定年を実施しているが、そこで就労をやめると、65歳からの年金受給開始まで収入が途絶えてしまう。そこで年金を繰り上げ受給すれば、収入の空白を埋められる。
ただし、デメリットもある。繰り上げする月数に応じて、65歳から受け取れる予定だった年金額が減額されるのだ。「減額率= 0.4%(注1)×繰上げ請求月から65歳に達する日(注2)の前月までの月数(注3)」で計算され、最大で24%が減額。それが生涯続くことになる。
(注1)昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は0.5%(最大30%)。
(注2)年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になる。
(注3)特別支給の老齢厚生年金を受給できる方の老齢厚生年金の減額率は、特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢に達する日の前月までの月数で計算する。
一方、繰り下げ受給のメリットは、なんといっても繰り下げた期間によって年金が増額されることだろう。「増額率(注4)=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数(注5)」で計算され、最大84%が増額。その増額率は一生変わらないのだ。
(注4)昭和27年4月1日以前生まれの人(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している人)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなり、増額率は最大で42%。
(注5)65歳以後に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算。
だが、少々注意が必要だ。もし配偶者が年下だと「加給年金」が受け取れなくなる。加給年金は厚生年金の被保険者が65歳に到達した時点で、被保険者が扶養する子どもや配偶者がいる場合に支給される年金のこと。諸条件をクリアしていれば、配偶者で22万8,700円、1人目・2人目の子どもは各22万8,700円、3人目以降の子どもには各7万6,200円が支給される。しかし、厚生年金を繰り下げ受給している間は、加給年金が停止されてしまう。
繰り下げ受給、統計結果から「得とはいえない人」が浮き彫りに
実際に、繰り上げ・繰り下げ受給した場合の減額と増額について、65歳で月17万円の年金を受け取る元・会社員の例から見てみよう。
繰り上げ受給では、65歳から受け取れるはずだった17万円が最大12万円弱まで減額されることになり、生涯続く。
60歳0ヵ月:11.9万円(30.0%の減額)
61歳0ヵ月:12.92万円(24.0%の減額)
62歳0ヵ月:13.94万円(18.0%の減額)
63歳0ヵ月:14.96万円(12.0%の減額)
64歳0ヵ月:15.98万円(6.0%の減額)
繰り下げ受給では、75歳まで待った場合、17万円だった年金が毎月30万円を越えるものになり、それが生涯続く。
66歳0ヵ月:18.428万円(8.4%の増額)
67歳0ヵ月:19.856万円(16.8%の増額)
68歳0ヵ月:21.284万円(25.2%の増額)
69歳0ヵ月:22.712万円(33.6%の増額)
70歳0ヵ月:24.14万円(42.0%の増額)
71歳0ヵ月:25.568万円(50.4%の増額)
72歳0ヵ月:26.996万円(58.8%の増額)
73歳0ヵ月:28.424万円(67.2%の増額)
74歳0ヵ月:29.852万円(75.6%の増額)
75歳0ヵ月:31.28万円(84.0%の増額)
この試算結果を見ると、繰り下げれば繰り下げるほどお得になる。
厚生労働省『簡易生命表』によると、2022年、日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳。これはあくまでも平均であるから、もっと長く存命する人も多いはずだ。もし心身の状況が許すなら、75歳まで現役として働き、その後に手厚い年金をもらうのもひとつの有力な選択肢ではなかろうか。
だが、それは既婚者の話で、未婚男性は該当しない。なぜなら、未婚男性の平均寿命は67.2歳と驚くほど短命だからだ。
男性の死因を有配偶男性と未婚男性で比較すると、有配偶男性が上回っているのは悪性新生物のみとなっている。未婚男性は腎不全の比率が最も高く、ほかにも高血圧性疾患や糖尿病が多い。これらは生活習慣によるところが大きいものだ。
そして、もうひとつが自殺のリスクだ。男性全体の自殺率は人口10万人あたり25.7に対し、有配偶者は16.8、そして未婚は32.9、離別は101.0。背景についてはわからないが、いずれにしろ、独身男性は統計上、短命という結果が出ている。
もちろん、未婚男性でも平均以上に長生きする人もいる。だが、客観的に見れば「年金の繰り下げ受給」がプラスに働かない未婚男性が一定数存在することは確かだといえそうだ。
「タックスヘイブン」を使って、節税・秘匿性確保はできるのか?
「海外法人」の設立法・活用法
>>>11/12(火)LIVE配信
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【11/6開催】不動産オーナーなら
知っておきたい「輸入高級家具」の世界
【11/7開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法
【11/7開催】GAFAM+Nは終わる?
米テクノロジー産業の見通し
2025年に向けた「米国経済・株式市場」
と「米国株」運用術