●今年のジャクソンホール会議はグローバル経済の構造転換をテーマに8月24日から26日まで開催。
●近年では中銀首脳の発言で市場が大きく動くことも多く、ジャクソンホール会議への注目度は高い。
●パウエル議長が政策に触れるとすれば従来の見解に、目新しさはないものの市場の混乱は回避か。
今年のジャクソンホール会議はグローバル経済の構造転換をテーマに8月24日から26日まで開催
米カンザスシティー連邦準備銀行は1978年以来、米国および世界経済が直面する重要な問題をテーマに、シンポジウムを開催してきました。1982年からは、同行が管轄するワイオミング州ジャクソンホールにあるグランドティトン国立公園のジャクソン・レイク・ロッジで開催されています。通称「ジャクソンホール会議」と呼ばれるこのシンポジウムでは、主要国の中央銀行総裁や幹部、経済学者らが集い、学術的な議論が交わされます。
今年で46回目を迎えるこのシンポジウムは、「グローバル経済の構造転換」をテーマに、8月24日から26日まで開催されます。新型コロナウイルスの感染拡大による混乱は収まりつつありますが、貿易や金融の流れの変化に伴い、国内外の経済構造も長期的に変わっていく可能性が高まっています。今回は、このような動きが今後10年間の経済成長と金融政策にどのような影響を与えるかが、主な論点となります。
近年では中銀首脳の発言で市場が大きく動くことも多く、ジャクソンホール会議への注目度は高い
ジャクソンホール会議は、もともと小規模なシンポジウムでしたが、近年では中央銀行首脳の金融政策に関する発言で、市場が大きく反応することもあり、注目度が高まっています。例えば、2010年8月の会議では、当時のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が追加の金融緩和を示唆し、その後、同年11月にFRBは量的緩和第2弾(QE2)の導入を決定しました(図表1)。
また、2014年8月には、当時のドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が追加の金融緩和を示唆し、直後に開催された9月のECB理事会で、政策金利の引き下げが決定されました。そして、2020年8月の会議では、FRBがパウエル議長の講演と同時に、金融政策の新たな指針を発表し、物価目標を従来の2%から「一定期間の平均で2%」という政策に柔軟性を持たせた内容に変更しました。
パウエル議長が政策に触れるとすれば従来の見解に、目新しさはないものの市場の混乱は回避か
今回、パウエルFRB議長の講演は、日本時間8月25日23時05分に予定されていますが、今後の金融政策について何かしらの手掛かりが示されるか否かに市場の関心が集まっています。ただ、パウエル議長が金融政策に触れるとすれば、従来通り、インフレ抑制に対する強い姿勢を示しつつ、追加利上げの判断はデータ次第で、会合ごとに決定するとの見解を繰り返す可能性が高く、政策の方向性をあらかじめ示すことはないとみています。
なお、直近のフェデラルファンド(FF)金利先物市場では、利上げはすでに終了、利下げは来年半ば頃に開始との見方が優勢になっています。また、ドル円をみても、来年の米利下げ回数との連動性が高まっていることから(図表2)、市場の焦点は年内の追加利上げの有無から来年の利下げ回数に移っている模様です。仮にパウエル議長の発言が前述程度なら、ある程度は織り込み済みのため、一段の長期金利上昇や株安は回避できると思われます。
(2023年8月23日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【投資家が注目】“中銀首脳の発言”で市場が大きく動くことも…「一段の長期金利上昇」や「株安」は起こるか?今週8/24~8/26の「ジャクソンホール会議」(ストラテジストが解説)』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト