激しくまばたきをしたり、何度も首を振る仕草を見て「これってクセなのかな?」と疑問に感じたことはないでしょうか? もしかしたらそれは「チック症」かもしれません。今回は児童精神科医のさわ先生に「子どものチック症」についてインタビュー。どんな症状が出るのか、すぐに治療の必要があるのかなどについて詳しくお話を伺いました。
子どもの〈チック症〉とは?症状と治療の判断ポイント【児童精神科医が解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

 

チック症はすぐに治療が必要?

生活に支障がないなら様子見を

チック症は「病気」ではありますが、必ずしも治療が必要かというと判断が分かれるところだと思います。例えばお子さんにまばたきを繰り返すといった症状が見られた場合、それが生活に支障を及ぼさないのであれば、特に気にすることはありませんし、治療の必要もありません。親御さんが気にしすぎてお子さんを病院へ連れて行った結果、本人がチックを意識しすぎてしまい悪化するケースもあります。

 

集団生活が苦痛になったら治療もあり

逆に治療が必要なのは、チックの悪化によって周囲からいじめられたりからかわれて、集団生活が苦痛に感じてしまった場合です。投薬による治療が一般的ですが、もし学校に行くことが負担になって症状が悪化している場合は、環境調整として学校をお休みする提案をすることもあります。

 

親御さんや周囲の大人ができること

ストレスを取り除いてあげる

かつてはチックは厳しいしつけや家庭環境が原因などと言う風潮もありましたが、それらのストレスが原因ではないことは前述した通りです。ただしストレスが発症のきっかけになったり、発症後の悪化の要因になることは考えられます。普段の生活の中で子どもの負担になっていることや、少し忙しくしすぎているかもと感じたら、見直してあげることで軽減することもあります。

 

指摘したり意識させない

子どもの場合、本人がチックの症状について自覚していないことがほとんどだと思います。チックを悪化させないためには本人に自覚させないことも重要なので、「何そのクセ?」「やめなさい」などと言って症状に注目しない方がいいこともあります。

 

周囲へ理解を求める

チックは単なるクセとの見分けが難しかったり、特に汚言症に関しては理解してもらうのが難しく誤解や叱責を受けてしまうこともあります。まずはチック症という病気があることを知ってもらい、もし親御さんが必要と感じるようであれば、学校の先生などに理解を求めてみてもいいと思います。

 

相談はかかりつけの小児科や児童精神科医へ

私は児童精神科医としてチックのお子さんの診察をすることもありますが、チックの症状というのは緊張した時は出にくい傾向があります。ですからお子さんにとって慣れない診察室では症状が見られないことも多いです。そのような場合はお家での普段の様子をビデオに撮ってきてもらって、それで診断することもあります。ただし先ほども申しましたように、チックは本人に意識させない方がいいので、ビデオを持って親御さんだけ来ていただいてお話しすることもあります。もちろん患者さん本人が来ないと診察できないとおっしゃる先生もいますので、あくまで私の場合としてご理解ください。

 

繰り返しになりますが、チック症は子どもにはありふれた病気なので、「もしかしてチックかも」と感じた場合でも、すぐに慌てて病院へ連れてきてもらう必要はないと思っています。ほとんどの子が自然に治るものなので、あまり気にせずに親御さんはドンと構えていただくことが、一番の治療法かもしれません。それでもちょっと重くなってきてしまったと感じる場合は、まずはかかりつけの小児科医か児童精神科へご相談してみてください。

 

【今回話を伺ったのは】

精神科医さわ/精神科医

藤田医科大学医学部卒業。藤田医科大学病院にて初期研修後、精神科、神経科に勤務しながら児童から高齢者まで幅広い精神疾患に対して診療を行う。2021年、愛知県名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開院。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。二児の母。