●4-6月期決算は増収増益となったが、企業は今年度の経常利益と純利益の減益見通しを継続。
●市場の業績予想は改善傾向に、ただし再び株高基調を強めるには、もう一段の上方修正が必要。
●企業の稼ぐ力向上などは進む見通しで、年末に向けた日経平均の上昇基調の回復余地はあろう。
4-6月期決算は増収増益となったが、企業は今年度の経常利益と純利益の減益見通しを継続
東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)は、8月14日までに2023年度4-6月期の決算発表をほぼ終えました。実績をみると、前年同期比で売上高は5.9%増、営業利益は15.2%増、経常利益は5.4%増、純利益は7.8%増と、増収増益の着地となりました。背景には、インバウンド(訪日外国人)需要の回復や円安の進行、供給制約の改善があると思われます。
経常利益のプラス寄与の大きい業種は、電気・ガス業、輸送用機器、陸運業などで、マイナス寄与の大きい業種は、海運業、石油・石炭製品、卸売業などでした。なお、企業自身による2023年度の業績予想は、前年度比で売上高が2.3%増、営業利益は7.7%増、経常利益は0.3%減、純利益は2.6%減となっています。5月16日時点の集計と同じく、経常利益と純利益は減益見通しで、企業は業績に対し慎重な見方を維持している模様です。
市場の業績予想は改善傾向に、ただし再び株高基調を強めるには、もう一段の上方修正が必要
このように、業績予想について、企業自身は慎重な姿勢を示しているものの、市場では少しずつ業績改善の見方が広がっています。実際、アナリストによる業績予想の傾向を示す「リビジョン・インデックス」(TOPIX構成企業対象)は、足元で改善傾向にあり、8月9日時点で+7.1%と、業績予想を上方修正した銘柄の割合が大きくなっています。ただ、今のところはまだそれほど市場の業績予想が大きく上方修正されるには至っていません。
そこで次に、日経平均株価に目を向け、終値ベースで節目の3万円台を回復した5月17日から8月15日までの1株あたり利益(EPS)と株価収益率(PER)の推移をみると、PERが水準を切り上げる一方、EPSは伸び悩んでいることが分かります(図表1)。日経平均の上昇は6月中旬以降、一服していますが、再び株高基調を強めるには、やはりEPSの上昇、すなわち業績予想の改善が待たれます。
企業の稼ぐ力向上などは進む見通しで、年末に向けた日経平均の上昇基調の回復余地はあろう
改めて、海外投資家の日本株の売買状況を確認すると、新年度入り後は現物、先物とも買い越しの動きが顕著でしたが、7月以降、現物の買い越し額が細り、先物は売り越しが目立つようになっています(図表2)。夏場は海外投資家が日本株を売り越す傾向にあるため、季節的な要因も大きいと思われますが、業績改善に関するもう一段の材料待ちの姿勢とも受け止められます。
この先、インバウンド需要の回復継続や、米経済の軟着陸(ソフトランディング)、中国景気の持ち直しなどの実現は、業績予想改善の重要な要素です。その流れが強まれば、海外投資家の買い越し基調も回復し、中間決算で企業自身が業績予想を上方修正する動きも広がると思われます。企業の資本効率改善と稼ぐ力の向上は、段階的に進むとみており、弊社は日経平均について、年末に向け上昇基調を回復する余地はあると考えています。
(2023年8月16日)
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『再び〈株高基調〉を強めるには?「国内企業4-6月期決算」の総括と「日経平均株価」の立ち位置【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト