高齢化の進行に伴い、老後資金が足りなくなるリスクが懸念されます。それに対処するための有効な方法の一つが「投資」です。しかし、投資は損をする危険と隣り合わせなので、失敗しないための一定のルールを固く守ることが大切です。そのルールとはどのようなものでしょうか。FPの浦上登氏による著書『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)から一部抜粋して紹介します。
投資で守るべき「鉄則」と、勧められても手を出してはならない「3タイプの商品」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

自分で十分理解できないものには投資してはいけない

お金を増やすための方法論を持つということに関して心掛けるべきことは、自分が十分理解できないものには投資をしないということです。

 

金融商品は複雑化しているので簡単には理解できません。

 

「デリバティブ」、「レバレッジ」などの名前を付けた金融商品が横行しています。証券マンの通り一遍の説明を聞いて理解できる人はまずいないと思います。単に自分のお金を増やしたい人がそんな複雑なものまで理解する必要もありません。

 

株式、アメリカの国債、金、不動産とリンクするREIT(不動産投資信託)だけでも、その基本を理解するのにかなり勉強をする必要があります。

 

実は筆者自身、原油価格にリンクして価格が変動するETF(上場投資信託)に投資して損をした経験があります。

 

10年近く前、原油の値上がりが予想されたので、原油の価格にリンクして変動するETFに投資をしました(ETFとは株式のようにいつでも市場で売買できる投資信託と考えてください)。

 

果たして原油価格は上がったのですが、ETFの価格はむしろ下がっています。

 

おかしいと思って調べてみると、原油の保管費用がETFの価格に反映されているとか、原油先物価格と現物価格の「限月乗り換え」(説明は敢えて省略します)がうんぬんかんぬんとかで、原油価格が上がってもETFの価格は下がるようにできているようです。

 

ETFなので投資信託と違い、投資判断に必要な重要事項を説明する「交付目論見書」も運用実績等を記載した「運用報告書」もありません。いずれにしても、このような複雑怪奇な商品には手を出してはいけません。

 

読者の方々にも似たような経験をされた方がいらっしゃるのではないでしょうか?

 

あくまで、自分の頭で考えて、その商品の基本的な原理がわかるもの以外には手を出してはいけないということです。

 

原油ETFと同様、理解できない商品としてデリバティブを使った「仕組債」、「仕組預金」があります。高齢者の方が高い利回りに惹かれて買って損をしたことで、仕組債は2022年、証券会社での販売停止が相次ぎました。

保険会社の取り分が大きすぎる外貨建保険に入ってはいけない

保険は資産運用の手段としても使われますが、アメリカドルの高金利を利用して保険会社やその代理店である銀行が売ろうとしている外貨建保険があります。

 

円をドルに換えて保険料を支払い、3~4%のドル金利で運用したのちに契約者に還元するものですが、次の2つの問題があります。

 

【外貨建て保険の問題点】

・為替リスクがあること

・ドルの高金利のメリットのほとんどを保険会社がとってしまうこと

 

1つ目の為替リスクについてはいろいろ指摘されているので、ご存じの方も多いと思います。ドルの為替リスクについてはきちんと理解して対処すれば乗り越えることは可能です。

 

問題は2つ目の高金利のメリットを保険会社がとってしまうことです。高金利での運用成果の55%から85%ほどを保険会社がとってしまい、契約者には15%から45%しか還元されない仕組みになっている保険契約がかなりあるようです。

 

仮に年4%で運用できたとして、保険会社の取り分が2.2%から3.4%ということになります。

 

それ以外にも、為替手数料もインターネット証券会社が1ドル当たり25銭で設定しているのに対し、1ドル当たり50銭となっていたり、保険金を年金で受け取ろうとすると、年金で受け取るための手数料を取られたりするなど、保険会社は絶対に損しない仕組みになっています。

 

高金利のメリットはほとんど契約者に還元されていません。

 

インターネット証券会社でアメリカ国債を買えば、高金利のメリットはすべて契約者に入ってきます。私がアメリカ国債による資産運用をおすすめする理由はそこにあります。