長生きすればするほど、老後資金が足りなくなるリスクが増大します。これに対処するには、60歳以降もお金を増やすために「投資」を行うことが有効です。投資に際しては、リスクをできるだけ抑えることに加え、毎年のコストを抑えることも重要です。では、どんな点に留意すべきでしょうか。FPの浦上登氏の著書『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)から一部抜粋して紹介します。
つみたて投資をするなら「新NISA」「iDeCo」は必須!利用しないと即「利益の20%以上」を失うワケ【70歳現役FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

低コストが投資の成功のカギ

投資信託の手数料では、「信託報酬手数料」が要注意

投資で最も重要なことの一つは、余分な手数料や税金を排除して、徹底した低コストを目指すことです。

 

たとえば、「投資信託」は様々な形での運用を可能にするため、いろいろな会社が関与しています。投資信託にかかわる会社は、以下の3種類があります。

 

・運用会社:投資信託財産の運用指図を行う。

 

・受託会社:運用会社からの指図に基づいて有価証券を売買するとともにその保管を行う。

 

・販売会社:投資信託の募集・売買、分配金・償還金の受益者への支払を行う。

 

関与する会社が多い分だけ、投資信託の手数料は高くなりがちです。

 

投資信託に関する主な手数料は次の通りです。

 

1. 購入時手数料

 購入時販売会社に支払う手数料

 

2. 信託報酬手数料(運用管理に関する費用)

 保有時に投資信託の信託財産から間接的に支払われ、この信託報酬手数料を引去った金額を総口数で割ったものが基準価額として表示される

 

3. 信託財産留保額

 投資信託を解約する際、徴収される金額

 

上記のうち、購入手数料と信託財産留保額は一時払いの手数料ですが、その費用がかからない投資信託が多くなっています。

 

ですからこれらについては「ゼロ」の投資信託を買うことをお勧めします。

 

手数料のうち最も重要なのは、信託報酬手数料で、これは投資信託の運用管理に関するものなので、保有期間に応じて年何%という形でかかります。

 

一般的に最も安いもので、年0.1%程度、最も高いもので、年2%くらいかかります。0.1~2%と聞いて、「なんだ、大したことないな」と思われた方はおられませんか?

 

実はそうではありません。年2%の手数料のかかる投資信託を10年間保有すると20%もの手数料がかかってしまいます。

 

投資の基本は長期投資で、10年から20年投資信託を保有し続けることは珍しいことではありません。その場合、手数料が20%~40%かかるということは、儲けが飛んで、手数料のおかげで損をするという結果になりかねません。

 

運用に手間をかけるアクティブ型ファンドに手数料が高いものが多いです。

 

ただし、もう一つ注意すべきことがあります。信託報酬手数料については、契約者がコスト意識を持つことが難しい構造になっているのです。

 

投資信託の基準価額は本来の投資信託の資産総額から信託報酬手数料を差し引いた金額を総口数で割ったものです。それが投資信託の運用画面に表示され、基準価額の推移を示す形でチャートが作られています。

 

すなわち、投資信託の基準価額は常に信託報酬手数料が引かれた形で表示されていて、基準価額を見ているだけでは、信託報酬手数料が高いのか安いのかまったくわかりません。

 

投資信託の内容の説明ページ、交付目論見書や運用報告書にパーセントで表示されているものの、関係先に支払われた信託報酬手数料の「実額」が表示されることはなく、契約者自身には、投資信託の保有期間を通じて、いくら信託報酬手数料を支払ったのかがよくわからない仕組みになっています。

 

投資信託においては、信託報酬手数料が最低レベルの0.1%程度のものを投資の対象とするのが鉄則です。幸い、「株式指数」に連動した動きをし、リスクが分散されているうえ、経済成長が反映されやすい「インデックス・ファンド」は、信託報酬手数料0.1%前後のものがほとんどです。

 

これならば、10年から20年保有しても、信託報酬手数料は1%から2%で済むので、安心して長期保有をすることができます。