かわいそう…「不遇の世代の勝ち組」年収1,000万円だった52歳会社員→「子供部屋おじさん」の弟、認知症の母、元妻の浮気。結局団塊ジュニアは“暗澹たる人生”の哀れ【FPが解説】

かわいそう…「不遇の世代の勝ち組」年収1,000万円だった52歳会社員→「子供部屋おじさん」の弟、認知症の母、元妻の浮気。結局団塊ジュニアは“暗澹たる人生”の哀れ【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

苛烈な受験戦争、バブル崩壊、就職氷河期などを乗り越えてきた「団塊ジュニア世代」。不遇の世代が老後を意識する年齢に差し掛かってきました。そのようななか、今後は親の介護や非正規雇用など、これまで団塊ジュニア世代が抱えてきた問題がますます深刻化していくと予想されています。本記事では、長岡FP事務所代表の長岡理知FPが、Sさんの事例とともに団塊ジュニア世代特有の老後の問題点について、解説します。

父の死で発覚…実家が抱える「予想外の問題」

そんななか、今年、父親が79歳で亡くなりました。北陸地方の実家に一週間戻って過ごしたところ厳しい現実を突きつけられることになりました。専業主婦だった母親は公的年金だけの生活になるのですが、父親には遺産がありませんでした。公務員の退職金の多くをネットワークビジネスに騙し取られ、残りの預貯金も生活費で目減りしています。

 

共済年金に加入していたのでそれなりに年金額はあるのではと思ったのですが、問題はSさんの弟にありました。Sさんの弟は1973年生まれの49歳。Sさんと同じように優秀な成績で地元の高校に入学したものの、大学受験に失敗。2年浪人しましたが希望の大学には入れず、就職することに。

 

しかしバブル経済が弾けた時期と重なりました。地元の企業に就職しては低い賃金やいじめに辟易し転職を繰り返しているうちに、重いうつ病を発症してしまいました。ここ数年は入退院を繰り返し無職の状態です。未婚で、重度肥満のため糖尿病も罹患しています。消費者金融からの多額の借金もあるようです。実家でひきこもりとなっている、いわゆる「子供部屋おじさん」です。

 

父親はこの弟を支えてきて老後資金を目減りさせたのだろうと思います。これから母親が支えていくのは困難であるため、Sさんが支えていくことになるという現実を知りました。

 

また、75歳の母親は軽度の認知症があり、今後介護が必要になっていくのは明らかです。実家の台所はひどく散らかって汚れている状態を見てショックを受けました。子供のころの母親はきれい好きで神経質なほど整理整頓をする人だったのです。

 

母親の介護に一体いくらお金がかかるのか検討もつきません。弟が母親のサポートをできるとは思えません。Sさんが定期的に実家に戻ってくるしかなさそうです。北陸新幹線を利用するため交通費は莫大になっていくでしょう。

「勝ち組」のはずが、定年後に老後破綻する可能性も…

Sさんは自分の資産状況と今後のライフプランを考えると、やはり問題が多すぎると怖くなってしまいました。現在の貯蓄は1,200万円。退職金の予定額は2,500万円。あと8年は働いて貯蓄を作ることができます。

 

しかし、住宅ローンは退職時に1,500万円残る計算です。離婚していなかったら妻と力を合わせて60歳前に繰り上げ返済をする予定でした。この家を退職時に売却したとしてもおそらく残債を清算できる程度の値段でしょう。全体的にリフォームが必要になっていてさらなる出費も考えられます。

 

ファイナンシャルプランナーに相談してみたところ、今後は苦しい生活になるのは間違いないようでした。母親の介護費用、弟への支援、住宅ローンの残債の清算、年金支給開始年齢までの生活費、実家のリフォームや固定資産税・火災保険、自宅のリフォームなどを考慮していくと、70歳前に完全に破綻することがわかりました。

 

ファイナンシャルプランナーは正論をいうだけです。

 

「生活費を節約し、つみたてNISAなどを始め、副業などもはじめて収入を増やしていくしかありません。あとは自宅のリースバックで老後の生活費をまかなうことも可能かもしれませんが、老後に家賃が続くのはリスクが高まります。それにSさん自身が介護が必要になったときに介護資金がなく大変なことになります。60歳で引退はムリでしょう。嘱託社員として継続して働くか、定年退職後にも就職をするのをおすすめします」

 

とんでもなく絶望的な未来だとSさんは思いました。団塊ジュニア世代の同世代と比べて自分は「勝ち組」だと思っていました。お金に困ったことは学生時代から一度もありません。離婚しなかったら、預貯金も同世代の平均以上だったはずです。退職金もこのご時世では決して少ないとはいえず平均的であるはずです。

 

若いころから高級腕時計を何本も買い、高級ホテルに宿泊して旅行することが好きだったので、それがダメだったのか。生活スタイルがバブルのままだったのか。離婚したのが運の尽きだったのか。

 

父が定年退職後に浮ついた夢を見たせいなのか。妻の不貞行為のせいなのか。もし公的年金の支給開始年齢が70歳になったらどうなるのか。老いてもアルバイトをするしかなくなるのか……。「どこで間違えたのだろう……」とSさんは暗澹たる気持ちになりました。

 

以前、若い部下に「課長はバブル世代だから私たちのことは理解できないですよ」とからかわれたことがありました。実際はバブル世代より下ではあるものの、確かに部下よりは恵まれた生活をしてきたという自覚はあります。しかし、52歳になってこの状態。若い世代が考えているほど楽ではないのです。

 

現実を見て見ぬふりをしても、あと8年間はいまの年収で生活ができます。しかし8年間などあっという間です。東日本大震災からもすでに11年経っているのです。いまからもう老後の資金対策を検討していかなければなりません。

 

団塊ジュニア世代の勝ち組でもこのような状況に陥ります。価値観のアップデートや生き方を変えなければ、お金のみならず家族や親きょうだい、友人などとの人間関係も壊しかねないのが団塊ジュニア世代ともいえます。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表FP

 

 

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