「暦年贈与」とは?相続時精算課税制度との違い
「暦年贈与」とは、暦年(1月1日~12月31日)ごとに贈与を行い、その贈与額が年間110万円以下であれば、贈与税がかからない制度のことを言います。皆さまが一般的にイメージされる「贈与」はこの「暦年贈与」であることが多いと思います。
なお、この110万円という非課税枠は「基礎控除」といい、贈与を受ける者を基準として計算します。どういうことかというと、子供が父から50万円、母から60万円を同一年度に贈与された場合には、それを合計し110万円という計算を行います。
なお、暦年贈与と比較される制度に「相続時精算課税制度による贈与」があります。この相続時精算課税制度によって贈与した場合には、生涯で2,500万円までは贈与時に贈与税がかかりませんが、相続が発生したときに、過去に行った贈与を持ち戻して相続財産に計上するという制度となっています。
これまで、相続時精算課税制度を一度選択すると、暦年贈与の年間110万円の基礎控除は一生使えないことになっていました。しかし令和6年以降は、相続時精算課税制度においても年間110万円の基礎控除が使えるようになります。
「暦年贈与」と「相続時精算課税制度による贈与」の選択は、ペアごとに行い、たとえば、「父と子」「母と子」「祖父と子」のようにペアが異なるごとに選択をするかどうかを判断します。
「暦年贈与」の仕方を3ステップで解説
暦年贈与の具体的な仕方を次の3ステップで解説していきます。
【ステップ1】契約書を作成する
まずは、贈与契約書を作成します。何のために作成するかというと、「いつ」「だれからだれに」「いくら」贈与しましたということを、後から誰が見ても分かるように客観的な証拠を残しておくためです。ここで、贈与契約書の作成上の留意点を2つご紹介します。
◆贈与契約書へはそれぞれが自署及び実印での押印を行う
贈与契約書には、贈与者(あげる側)と受贈者(もらう側)の両者がそれぞれ自署で署名し、かつ実印で押印をするようにしましょう。また住所も記載し、かつ贈与契約書に両者が署名した日付も記載しましょう。
なお、自署や実印は必須ではなく、これがないからといって無効になるというわけではありませんが、本人が自らの意志で行ったということをより客観的に証明するためには有効と考えられます。
◆公証人役場での確定日付の取得
お近くの公証人役場へ、作成した贈与契約書をもって行き、「確定日付」のスタンプを押してもらいましょう。1部700円の手数料のみで簡単にその場で押印してもらえます。この「確定日付」は、その日にその文書が存在したことを証明するもので、その文書自体の内容や契約の有効性とは一切関係ありません。
公証人は特に文書の内容を見ることはなく、かつその文書を持参するのは当事者以外でも誰でもよく特に身分書類等も必要ありません。
「確定日付」を押印してもらうことで、契約書を後付け(バックデート)で作成したものではないということを証明することが可能となります。このような目的のため、贈与契約書の贈与日と同一日ではなくとも、数日程度であれば後になっても問題ありません。この「確定日付」の押印も必須ではなく、これがないからといって無効になるわけではありません。しかし、相続が迫っていて相続対策のために行う場合等は、あとから税務署にバックデートで作成したと疑われないためにもこの確定日付を取得しておくのが良いでしょう。
【ステップ2】資金の受け渡しを行う
通帳に記録が残るように資金の移動を行いましょう。贈与者(あげる側)の名義の銀行口座から、受贈者(もらう側)の名義の銀行口座へ直接振り込み処理を行うのがよいでしょう。振込手数料は、送金者側(あげる側)の負担で問題ありません。また、この資金の送金日と、ステップ1の贈与契約書の日付を同一にしておくようにしましょう。
【ステップ3】110万円以上の場合は贈与税の申告を行う
贈与する金額が年間110万円を超える場合には、贈与税の申告と納税の手続が必要となります。贈与税申告書に必要事項(誰からいついくらもらったのか、税額はいくらか)を記載し、税務署に提出し、贈与税を別途納付するという一連の手続となります。
なお、贈与税の申告手続きについて詳しくは、国税庁の贈与税申告書作成コーナーを見て頂くか、直接最寄りの税務署に行って相談を受けながら作成することも可能です。