「ねんきん定期便」を頼りに老後準備の落とし穴
「ねんきん定期便」に関しては、漏れや誤りの可能性のほかにも、こんなことが。
ーーあれ、年金額が昨年の見込額より少ない!
きちんと確認しているからこそ、気付くことかもしれません。ただ単なる早とちりの可能性も捨てきれません。
見込み額が少なくなっている原因として考えられるのが、まずは「加入状況の変化」。あくまでも50歳以上の「ねんきん定期便」に記されているのは、「これまでの年金加入期間」「最近の月別状況」を加味し、60歳到達の前月まで継続して加入し保険料を納めると仮定して計算した見込み額。厚生年金に加入しているなら、給与減により標準報酬月額が下がったり、賞与の支給がなかったり……加入状況の変化により、見込み額が減ることは十分に考えられるでしょう。
もうひとつが「年金給付水準の変化」。「ねんきん定期便」に表示している年金額の計算では、作成年月日の属する年度の年金給付水準が適用されます。現在、日本の公的年金は、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みであるマクロ経済スライドが導入されています。つまり年金の給付水準は毎年異なり、年金額が前年度より引き下げられれば、当然、年金額(見込額)は昨年より少なくなることがあるのです。
また年金給付については、もうひとつ大きな懸念があります。今後、マクロ経済スライドは終了し、2040年代中ごろには所得代替率が、2019年の61.7%から50%に低下します。これは現在、現役世代の生活水準に対して61%が保障されている公的年金ですが、将来は50%水準まで低下するということを意味しています。
たとえば、現在、59歳で平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)が上限の65万円、まさに勝ち組のサラリーマンがいたとしましょう。彼が60歳の定年で現役を引退した場合、65歳から受け取れる年金額は、国民年金と合わせて月21万円程度。現在、厚生年金受給者の平均年金額は月14万円といわれていますから、「さすがは勝ち組」という水準です。
しかし年金の目減りはすでに年金受給が始まった人に対しても適用され、2045年、81歳となった勝ち組サラリーマンの年金額は、実質16.8万円程度になることになります。
将来21万円程度の年金がもらえる……そう思って老後の準備をしていたのに、81歳となった2045年、「生活費が足りません!」と膝から崩れ落ちることになってしまうわけです。
今後、年金給付水準は大きく目減りすることが確実視されていますが、今以上に物価が上昇する可能性もあります。長寿化が進み、20年ほど見込んでいた老後が、30年、40年と長くなることも考えられるでしょう。その間、社会情勢は変化し、想定していなかった事態に直面。勝ち組であっても晩年に生活苦、というまさかの状況に陥る可能性も否定できないのです。
長生きのリスクに耐えられる、盤石な老後プラン。そのためにも1年に1回届く「ねんきん定期便」はしっかりと活用したいものです。
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