第2、第3のビッグモーターはほかにも存在する?
今回の件について、今後の騒動の発展による売上減少等はあるでしょうが、現時点において兼重親子は、彼らにとって傷の浅い、リカバリーが可能な判断を行ったのではないかといえるのではないでしょうか(もちろん、今後の世間の風当たりによっては、更なる選択の余地も想定されます)。
なお、日本には、代表取締役が1人株主となっている、もしくは家族と合わせて100%株式を有しているという「所有と経営の一致」の状態にある会社は少なくありません。では、そのような会社であれば、不祥事を起こしたとしても、今回のビッグアセットと同じ対応をすることによって、経営に関与する余地を残しつつ、財産的ダメージを少なくすることは可能といえるでしょうか。
これに対する回答としては、制度上可能ということはいえるが、今回のビッグアセットと事情が異なり、事実上は難しいというところでしょう。
まず、代表取締役を辞任しつつ株主の立場を放棄しないという対応について、そのような対応を了承しつつ新たに代表取締役を引き受けてくれる経営担当の人材を探すことが困難であることはいうまでもありません。ビッグモーターのような大きな企業であればともかく、日本に多く存在する中小企業での不祥事であれば、想像に難くないでしょう。
加えて、財政的にも、そのような企業は、借り入れの際、連帯保証人として代表取締役が入ることを求められるため、債務について簡単に逃げることができないといえるでしょう。このような中小企業の倒産の際は、代表取締役個人の破産も合わせて申し立てることが多く、すべて経営者の都合のいい制度にはなっていません。
今回の騒動から経営者が学ぶべきこと
今回の件は、あくまでもビッグモーターという事業規模の大きな会社でありながら、閉鎖的な経営体制であったことに起因する問題といえ、あらゆる企業に横たわる問題とまではいいにくいものです。
また、ビッグモーターの債権債務関係や今回の騒動の影響によっては、兼重親子がより大きなダメージを負うことも十分に想定されます。
兼重親子がほとんどダメージを負わないかのように報道されているものもありますが、事実関係によってはしっかりと兼重親子が経営上または財産上の責任を負う可能性もあるのです。
今回のビッグモーターの件から学ぶべきこととして、経営者は、ダメージを負ったときにどう傷を浅くするかという発想も重要ですが、ダメージを追わないための予防という観点を持って経営を行うこともまた、重要であることを考えるべきです。そのためには、まず不正なことをしないという当然のコンプライアンス意識を持つことから始めるべきといえるでしょう。
弁護士法人 山村法律事務所
弁護士 寺田 健郎
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