不祥事による財政上の不利益
次に、財政上の不利益として、どのようなものが考えられるでしょうか。
ひとつ考えられる点は、株価の低下による株式の価値減少分のダメージが典型的なものとして挙げられます。上場している会社の株主は、株価が低下したことによって、持っている株式数に従ってダメージを受けます。
今回のような大きな不祥事が上場会社で起こった場合の株主が負うダメージは相当に大きくなると想定できます。もっとも、ビッグモーターの場合は、非上場であり株式もすべてビッグアセットが保有、かつ手放す予定もないと考えられます。この場合、一般的に市場によるダメージを受けることは考えにくく、その影響は限定的と考えられます。
では、今回の件を契機に、ビッグモーターの業績が不振となって破産した場合の損失は考えられるでしょうか。当然ではありますが、前記の自益権、すなわち、売上減少によって剰余金配当を得られなくなるという大きなデメリットがあることは、言うまでもありません。他方で、破産については、ビッグアセットに責任を負わせることは難しいといえるでしょう。
先ほど、ビッグアセットのような株主は、「有限責任」であることを説明しました。会社の債務について責任を負わないことから、破産のような債務超過の状態になったとしても、株主であるビッグアセットが、債権者から法的請求を受けるということはありません。会社債権者は、ビッグモーターの残余財産をわけ合うことが関の山でしょう。
※もっとも、ビッグアセットがビッグモーターの100%株主であるため、親会社として、子会社であるビッグモーターの管理責任・内部統制責任を問われる余地もあるといえます。この点は、両社の関係性や内部状況による部分も多く、現時点で第三者による判断は難しいです。さらに、会社債権者等は、場合によっては兼重親子らが取締役であったときの任務懈怠責任を、兼重親子個人に追及できる可能性も考えられます。
ここまでの話をまとめると、兼重親子がビッグモーターの社長・副社長を辞任しながら、ビッグアセットの社長等に留まっていることによって、以下のことがいえるでしょう。
※ただし、親会社としての管理責任や取締役としての責任追及の可能性はある
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