岸田首相の「退職金大増税」に対して、多くの反対意見が寄せられていますが、実際、定年を迎えたサラリーマンは、どれほどの退職金を受け取り、いくらくらい税金を払っているのでしょうか。みていきましょう。
平均月収50万円…60歳・勝ち組サラリーマンでも「退職金、少なっ!」の残念な結末 (写真はイメージです/PIXTA)

大卒の平均退職金2,230万円…増税案に物議

サラリーマンの間で騒然となっている、岸田内閣が示唆する「会社員への増税案」。なかでも退職金に対する課税強化は大きな物議を醸しています。

 

現在、退職金は、勤続年数が長いほど税制面で優遇されますが、転職が当たり前になっている昨今、時代錯誤という指摘もあります。

 

退職金は全額に課税されるわけではなく、まず総額から「退職所得控除」の分を引いた金額に2分の1をかけて「退職所得」を求め、そこに所得税率を掛けるなどして税額が決定されます。この退職所得控除が勤続年数によって変わり、勤続20年までは原則「勤続年数×40万円」、勤続20年を超えると「勤続年数×70万円」が控除となります。

 

たとえば勤続38年だとすると、最初の20年は800万円、そのあとの18年は1,260万円、合計2,060万円が控除額となります。

 

勤続年数が短いと、どうなるのでしょうか。たとえば退職金を2,000万円を受け取ったサラリーマンAとBがいたとしましょう。Aは勤続20年、Bは勤続38年だとします。Aは2,000万円から控除額800万円を引いた1,200万円の2分の1、600万円に対して所得税が課税されます。一方、Bさんは、控除額のほうが退職金を上回るので、課税額はゼロ。いかに大きな差となるか一目瞭然です。

 

確かにこれだけの差があると、改正の動きがあっても当然かもしれませんし、そもそも、ひとつの会社に長く勤めることが稀になったいま、勤続年数が長い人を優遇する必要性もなくなったといえそうです。

 

ただサラリーマンの感情としては「そういうことじゃない!」「税金を取れるところから取るというのが許せない!」というのが本音です。

 

中央労働委員会『令和3年賃金事情等総合調査(確報)』によると、「退職金がある(退職一時金制度がある)企業」は89.7%。サラリーマンの10人に1人は「そもそも退職金はもらえない」というなか、働いています。

 

一方、退職金制度のある企業の平均退職金額は、大卒で2,230万円、高卒で2,017万円。60歳退職だとすれば、大卒であれば、120万円が課税対象となり、所得税が6万円、住民税(市民税と県民税)が12万円ほど、合計20万円程度が退職金から引かれます。一方、高卒の場合は、退職所得控除の金額が退職金を上回り、全額が手元に残る計算です。