多くのビジネスパーソンが関心を持っているキャリアアップ。その言葉から想像される「年収」や「肩書」のアップを実現しても、幸福感を得られずに悩んでいる人は少なくないようです。そこで一度原点に立ち返り、「そもそもキャリアとはなにか」という問題について考えてみる必要がありそうです。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、キャリアアップをめざすビジネスパーソンが“キャリアの迷宮入り”に陥らないためのポイントを解説します。
キャリアの“迷宮入り”を避けるために…「年収」や「肩書」よりも優先すべきもの【転職のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

 

常に優先順位が変動するキャリアの3要素

基本に立ち返ってキャリアというものを考えるとき、他人との比較に踊らされる必要はまったくありません。では、自分自身のキャリアを正しく評価するためにはどんな要素が必要なのでしょうか。エグゼクティブを対象としたサーチビジネスを手掛ける筆者の経験から考えるに、キャリアの評価や充実感は、以下に挙げる要素で構成されています。

 

①年収
②肩書(役割、職位、権限等)
③実現したいこと

 

当然、これらの優先順位は人によって変わります。

 

100人のビジネスパーソンの話を聞いたとすると、80人は「実現したいこと」を優先しています。次に「年収」、「肩書」と続くパターンがほとんどです(肩書が上がってくれば年収も上がってくるという相関関係が起きやすいので、このような優先順位になります)。

 

しかし業種によっては年収と肩書が思ったほどリンクしない場合もあるのが難しいところです。それに、「年収」「肩書」「実現したいこと」の3要素の優先順位が常に揺れ動くことが、問題を複雑にしています。たとえば家庭を持ったときや、急に資金が必要になったときなど、環境が変化するタイミングでは、この3要素の優先順位が入れ替わったり、はたまた同着で頭の中に湧き上がってたりして、本来みるべきものがみえにくくなります。

 

そんなときは、「自分が本当に実現したいことはなにか」という点に絞って定期的に頭をリフレッシュさせることが大事です。

 

年収や肩書に踊らされ、「自分の実現したいこと」ができていない人は少なくありません。現在の会社や環境で仕事を積み重ねていったとき、自分が将来実現したいことが叶うのかどうか。それが大事なポイントです。どんなに結果を残しても、自分のやりたいことは別にあり、この職場ではそれが叶わないということになれば、いくら頑張っても幸福にはなれません。

 

そこが転職を意識すべきタイミングといえますが、転職に際して「年収」「肩書」「実現したいこと」のランク付けに迷ったら、「実現したいこと」にフォーカスすることが、キャリアの迷宮入りを避ける方法です。

 

余談ですが、「年収はある一定額を超えると幸福係数には関係しなくなる」といわれています。これは日本のみならず、欧米でも広くキャリアカウンセリングなどの場面で語られることです。目標としている年収にはまだ一度も到達していないという人もいるでしょうし、お金に対する価値観は年齢によって違うため、年収と幸福度の関係は一概に語れるものではありません。

 

それでも、たまには「実現したいこと」に自分のベクトルを合わせてみましょう。「そもそもキャリアってなんだっけ」という悩みを解く、良い機会になるはずです。