岸田首相は2021年の政権発足時、格差是正に向け1人ひとりの所得を引き上げる「令和版所得倍増計画」を掲げていました。しかしサラリーマンとして日々労働する人たちに話を聞くと、現実の社会は非常に厳しいようで……。本記事では、FP1級の川淵ゆかり氏のもとへ訪れた4人のサラリーマンの事例をもとに、「勝ち組」の視点から日本社会の格差について川淵氏が解説します。
岸田首相の格差是正も虚しく…年収1,000万円超の“勝ち組サラリーマンたち”からみた「格差社会・日本」の実態【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年収1,000万円の50歳部長…「ねんきん定期便」で実感する格差

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

Cさん(50歳)は、部長職で年収は約1,000万円。大学時代の友人達とは、いまでもたまに飲みに行きますが、年齢的にも話題は定年後の過ごし方や年金の話になってきました。

 

特に、50歳になって「ねんきん定期便」の形式が変わったため、先日はその話題となりました。50歳以上になると、ねんきん定期便のフォーマットが次のように変わり、下記のように「現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定しての年金見込額」が表示されます[図表2]。

 

出所:日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド」
[図表2]ねんきん定期便の様式(サンプル) 出所:日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド」

 

Cさんは飲み友達のなかでは出世頭で収入も高く、自分では「勝ち組」だと思っています。ですが、この年金見込額を見て驚いてしまいました。

 

 ・老齢基礎年金額 79万5,000円(令和5年度の年額〈満額〉)

 ・老齢厚生年金額 約170万円

 

合計で、約250万円となり、月額では21万円にもなりません。あまりにもいまの収入との格差が大きくて、60歳で定年退職をしたら悠々自適の生活を送ろうと思っていたCさんでしたが、最近の物価上昇もあり、老後の生活に不安を感じるようになってきました。

 

そして先日は飲み友達のなかでこのねんきん定期便の話をしたときに、年収が自分とはおよそ半分だと思われる同い年の友人の年金見込額が約190万円と聞いて、さらに驚いてしまいます。

 

「え~。なんで年収1,000万円の自分と500万円の彼との年金額の差がたった60万円なんだよ!」これは、

 

 ・年収が違っても老齢基礎年金の額は同じ(満額の場合)であること

 ・年収が高くても厚生年金の標準報酬額には上限があること

 

といった理由から、現役時代の年収に大きな差があっても、年金受給額にはそれほど差が出なくなります。現役時代に高収入で「勝ち組」と思っていた人ほど年金受給額との差が大きくなってしまうため、生活レベルを下げないと老後資金が枯渇し「負け組」になってしまう危険性もあるのです。

 

現役時代の収入と年金収入との「格差」には十分注意しましょう。