増加する“ひきこもりシニア”…「8050問題」から「9060問題」へ
2023年3月に内閣府が発表した「こども・若者の意識と生活に関する調査」によると、ひきこもりの推計は146万人(15~64歳)という数字になっています。
中高年のひきこもりも問題になっています。厚生労働省「令和5年度版厚生労働白書」によると、40歳~64歳のなかでは、60~64歳の者の割合(36.0%)が最も高くなっています。定年退職等により60歳で仕事を辞めた人達が、その後仕事に就かないまま、ひきこもりになってしまうケースが多いことがわかります。
また、ひきこもり状態になってからの期間も3年以上が約半数となっています。
ひきこもりになってしまう理由もさまざまですが、次のように、40歳以上の場合は「退職したこと」や「病気」「人間関係」が大きく影響しているのがわかります。
シニア世代のひきこもりは親もかなりの高齢です。ひきこもり等で収入がない50代が、80代の親に生活の面倒をみてもらう「8050問題」。親の長寿化とひきこもりの長期化で、このごろでは「9060問題」といわれるようになったようです。
92歳の父親の年金に頼って暮らしている61歳の息子
61歳のAさんは、郊外の一戸建てに92歳の父親と二人暮らしの男性です。一見、定年退職した男性が父親の面倒を見ながら暮らしているように思われますが、実はAさんは「ひきこもり」。92歳の父親の年金(月23万円程度)で食べさせてもらっているのは子どものAさんのほうなのです。
Aさんは夜中にコンビニに行ったり、数日に一度スーパーに買い物に行ったりすることはできるのですが、ほとんどを薄暗い自室で過ごしています。父親は歩くことはできるのですが、自分ひとりでの生活は難しく、デイサービスや訪問介護を利用しながら暮らしています。
Aさんの母親は10年ほど前に亡くなっており、Aさんの50代の妹は父親の様子を見に嫁ぎ先から時々やってきては世話をしてくれています。
この妹が父親の介護サービスの手続きなどやってくれたのですが、デイサービスの送迎の人が来ても訪問介護のホームヘルパーさんが来てもAさんは顔を出そうとはしません。母親が亡くなったときも葬式の手配などすべて妹任せで、Aさんはほとんど部屋から出ることはありませんでした。
親戚の人達も「困ったもんだねぇ」と言うばかりで気持ち悪がって知らん顔でした。