タワーマンション(以下タワマン)が増え続けています。そこで今回は、高齢化が進む日本において、高齢者がタワマンに住むリスクについて、事例とともにFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
近年急増の〈タワマン孤独死〉の実態…資産1億1,000万円の65歳独居老人、終の棲家に「タワマン」を買って大後悔【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

タワマンで救急車やはしご車は間に合うのか?

昔に比べ、地震や台風といったリスクが増えてきています。そして、タワマンの火災のニュースも記憶に新しいところですね。もし、タワマンで火災が起きたら、消火はどのように行うのでしょうか。

 

タワマンの火災対策としては、

 

・スプリンクラー設備の設置

・非常用エレベータの設置

・特別避難階段(排煙設備・防火扉)の設置

 

などが義務付けられています。

 

タワマンの高さは60m以上にもなりますが、はしご車のはしごの長さは30mのものが多く、せいぜい10階程度のビルの高さまでしか対応できない、といいます。

 

それでは、どのようにタワマン等の高層ビル火災に対応するかというと、一定以上の高さの建物内には放水口が設置されており、そこにホースを差し込んで建物内部から消火活動ができるようになっています。

 

ですが、火災が起きると住民は地上まで逃げないと安心はできません。設置されている非常用エレベータで逃げることも可能ですが、電気を動力とするため必ず動くとも限りません。高層階の住民は階段でいったん屋上まで非難することにもなるでしょうが、やはり地上に降りるまでは不安でしょうし、住民が一斉に逃げることでパニック状態にもなり得ます。

 

タワマンに住むエレベータに慣れきっている高齢者にとっては、階段の上り下りはかなりキツいでしょうし、非難する人で階段があふれてしまうと事故によるケガも予想され、二次災害にもつながってしまいます。もし、高階層で体調が悪くなり救急車を呼んだ場合はどうなるでしょうか。非常用エレベータを利用しての搬送は可能でも、上り下りにどうしても時間が必要なため、一戸建てに比べると余分に時間がかかってしまいます。大きなケガや脳卒中などの場合、一分一秒が命にかかわることもあるのです。

近年のタワマンでの災害被害

2022年6月には東京・品川の44階建てタワマンで18階のベランダから出火し消防車30台以上が出動し消火活動にあたりました。この火災で、住民や警備員の合わせて4名がケガをしており、ほかに3名が煙を吸って病院に搬送されています。約400人の住人が避難した火事となりましたが、18階以上のエレベータは動かなくなってしまい、「避難をあきらめ部屋でじっとしていた」というペットと住む高齢者もいたようです。

 

2019年10月には台風19号による多摩川の氾濫で、神奈川・武蔵小杉の47階建てタワマンの電気設備がある地下が浸水し、断水と2週間以上の停電が発生しました。これによりエレベータが停止したり、トイレの水を流せなくなったりするなど、都市型災害の問題が露わになった被害でした。

 

ほかにも、台風などの強風は高層階になるほど揺れるため、乗り物酔いする人は入居前に確認しておく必要があります。

 

「タワマン」と「高齢者の孤独死」の関係性

また、高齢者に重要な日常の体調管理にも問題があります。一戸建てだと、気軽に散歩したり買い物に出たりすることもできますが、タワマンだと地上に降りるまでにエレベータが途中で何度も止まることがストレスになり、外に出なくなってしまう危険性があります。運動不足は足腰が弱くなりますので、健康寿命が短くなることも。

 

さらに部屋から出なくなると近所との付き合いも少なくなるため孤立する危険性もあって、これが「孤独死」につながる怖れもあります。高齢者のタワマン住まいにはいかに「心身ともに健康でいられるか」も重要になります。「孤独死」の場合、発見までの時間が長いと死因がわからなくなる、ということもあります。

 

以前は長くても亡くなってから1ヵ月で発見されたそうですが、新型コロナウイルスの流行が本格化してからは、3ヵ月後に発見されるケースも相次ぎました。