高齢者、母子世帯……貧困に陥る人たちには、いくつかのパターンがあります。そのなかのひとつがニート。事情はさまざまですが、自宅に引きこもり、社会からは断絶。「甘えるな」の厳しい批判の先には、辛い未来がまっています。みていきましょう。
月収38万円だが…働かない「40代・引きこもりニート」親が死んだら貧困の既定路線「もう、死ぬしか」 (写真はイメージです/PIXTA)

中年ニートは全国で60万人強…厳しい批判もあるが

若年無業者と似たような言葉として、ニートがあります。厳密には「15~34歳の男女のうち、主に通学や家事をしていない無業者」を指し、少々定義は異なりますが、総務省統計局が「いわゆる『ニート』に近い概念として若年無業者」と記している通り、無業者をそのままニートとして語られることも多いようです。

 

またニートとされる人たちよりも上の世代、「35歳以上でニート状態」の人たちは「中年ニート」と呼ばれることも。30代前半のニートと30代後半の中年ニートを比較して「中年ニートはニートの2倍以上」とニュースになったことがありました。

 

さらに2019年の内閣府の調査では「自宅に半年以上引きこもっている40〜64歳は、全国に61万人以上もいる」とされ、こちらも大きな話題に。ちなみに厚生労働省のいくつかの調査では、「中年」=「45~64歳」としています。

 

40代後半のサラリーマンの平均給与は、月収(所定内給与額)で38.8万円、賞与も含めた年収は636.0万円です。サラリーマンの給与は50代前半で月収で41.0万円、年収で672.2万円、50代後半で月収は41.6万円、年収は674万円とピークに達します。サラリーマン人生において、頂点にのぼろうとしているなか、自宅に引きこもったまま、収入ゼロ円の人も珍しくはないようです。

 

中年ニートはどのように暮らしているのか……その多くは親の年金。厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者の平均年金額は14万円ほどといわれていますから、実家であれば、何とか暮らしていくことができます。

 

問題は親が亡くなった後。本当に「収入ゼロ」となり、生きていくのが困難な状態に。40代後半であれば親は70代後半くらいでしょうか。平均寿命からすると、あと10年ほどでそんな状態になることも十分に考えられます。

 

――もう、死ぬしかないのか

 

そのような極限状態に直面したら……たまにニュースになる「年金の不正受給」は、このような状況下で起きることも多いようです。

 

またニートに対しては「単なる甘えではないか」という厳しい批判も。確かに、前出の白書には「つべこべ言わずに働け!」と思わず怒鳴ってしまう言い訳が並びます。しかし、なかには甘えではないケースもあり、そのような人に対しては、就業支援という選択肢も。たとえば「公共職業訓練(離職者訓練)。ハローワークの求職者であれば、3ヵ月~2年ほどの訓練を受けることができ、自動車整備や電気設備技術などを学ぶことができます。テキスト代等は実費負担となりますが、ほかは無料で就職に必要なスキルなどを学ぶことができます。

 

また「求職者支援訓練」はニートのほか、失業保険に加入できない求職者(受給終了者含む)を対象に、就職に必要な職業スキルや知識を学べる職業訓練を受けることができます。こちらもテキスト代等は実費負担となりますが、ほかは無料。しかも月10万円の生活支援の給付金を受けられ(支給要件あり)、2021年度は全国で3万人強が受講しています。

 

社会と関わりのない人たちに「いきなり働け」は難しく、まず必要なのは支援。長いブランクがあるケースが多いので、まずは就職を目指すのではなく、職業訓練などからスタートするのもひとつの手です。