理想のキャリアを実現するためのファーストステップとして、「キャリアの棚卸し」を行うことが重要です。将来どのようなキャリアを歩みたいのか、その理想は、現在の職場で実現可能かを確かめるとともに、直近の自分の仕事がどのような評価を得ているのか客観的に把握しておくことで、転職の成功確率を高めることができます。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、「キャリアの棚卸し」において押さえておきたいポイントを解説します。
転職の成功に不可欠な「キャリアの棚卸し」…絶対に押さえるべき4つのポイント【エグゼクティブ転職のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「キャリアの棚卸し」で押さえるべき4つのポイント

それでは、「キャリアの棚卸し」においては何を整理すべきなのでしょうか。とくに重要な4つのポイントを、以下に解説します。

 

この数年、実際に何をしてきたか
淡々と業務経歴を羅列するのではなく、それを通して組織内で貢献できたことも盛り込むといいでしょう。
・挙げた実績は業界内や外部から見たとき、どれくらいの価値があるか
客観的視点に立って自己分析をすることは難しいですが、実に重要なポイントです。主観的にならず、社外や同僚、上司、部下などから見た評価について、シビアにジャッジしましょう。
それは実績として外部にアピールできるものか
実績について、オーバートークをする必要はありません。今の立場や役職、役割の範囲は、外部の人が見れば自然に分かるものです。しかしながら過小評価する必要もありません。どの程度、どのように組織に貢献できたのか、その1点を思案してみてください。
・組織の「看板」があってこその実績か否か
所属している組織のネームバリューやブランドがあまりに強く(良いことでもあるのですが)、組織の看板があってこそ実現できている仕事と見られる場合、本人の実績は差し引いて評価されることもありますから、注意が必要です。外から正当な評価を得るためには、やはり実績について「棚卸し」を行い、整理しておく必要があります。

 

自身の「実績」について、それが社外の人から見てどれほど価値のあることなのか、まずは冷静に把握することが重要です。

 

「今やりたいこと」や「将来チャレンジしたいこと」を目標として掲げると、意欲的な行動を起こすモチベーションが沸き上がってきます。そのため、キャリアの成功を考える上で、将来のビジョンを語ることはとても重要です。しかしながら、直近の仕事でどれくらいの実績を挙げ、プロフェッショナルとしてどのような評価を得ているのかを客観的に把握して正しくプレゼンテーションできるようにしておくことは、場合によっては、将来について語ることよりも重要なのです。

 

キャリアの「旬」は短い…だからこそ年に1度は「棚卸し」を

「病気が見つかるのが怖い」という理由で、病院や歯科の健診を避けた経験はないでしょうか。

 

健康診断で何か問題が見つかると、自己管理の問題点が炙り出されます。それが数値に現れれば医師に厳しい指摘を受け、痛くて辛い治療を受けることになるでしょう。そんな現実から目を背けるために、そもそも健康診断を受けない、という選択をする人も少なからずいるようです。

 

「キャリアの棚卸し」においても同じように、自分自身では達成感を誇っていた過去の仕事について、実はまったく評価されていなかったことに気がついたり、あるいは理想のキャリアを実現する上での致命的な欠陥が見つかったりします。

 

しかし、旬を迎えたキャリアの時期、キャリア形成にとって重要な時期というのはごく短いものです。

 

ですから1年に1回は「キャリアの棚卸し」を行い、いつでも準備を整えておくことが重要です。毎日、一生懸命取り組んだ仕事が「キャリア」として外部から評価されるのか、曖昧な部分を常に明らかにしておくのです。

 

筆者は、「キャリアの棚卸し」こそが、社会人として一定の経験を有する人の、キャリア形成におけるもっとも初歩的なスタートラインであると考えています。可能であれば、転職エージェントから案件紹介を受ける前段階において、プロフェッショナルから適切な評価とアドバイスを受け、自分のキャリアの棚卸しをこなしておきましょう。