最近よく聞く「キャリアの棚卸し」とは?
「キャリアの棚卸し」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
ご存じのように、「棚卸し」というのはメーカーや流通業、小売店などが一定期間の損益計算をするために製品や原材料などの資産について種類や数量、価格などを正確に把握し、評価する作業のことをいいます。決算日直前に従業員が店頭で在庫を数えている姿が目に浮かびますが、なかなか原始的な印象を受けます。
筆者が代表を務める東京エグゼクティブ・サーチの造語である「キャリアの棚卸し」もこれと同じく、自身のキャリアを正確に把握し、評価する作業を指します。しかし筆者が日々、多種多彩なエグゼクティブの方とお会いして話をしていると、キャリアを適切に自己評価できている人は10%にも満たないように感じます。
それほど、冷静かつ客観的にキャリアを見つめるのは難しいことなのです。
「キャリアの棚卸し」は、自分が直近の1~5年に経験した仕事でどのような実績を挙げているか、さらに自分が志向する「やりたかったこと」とどれほどのギャップがあるか、また自分が「近い将来にしたいこと」と、現在の業務はマッチしているのか、ズレているのか、そういったことを少なくとも年に1回、人間ドックのようにチェックする作業です。
病院で診察を受けて処方箋を受け取るように、ご自身のコンディションやキャリアの状況を適切に判断する機会を設けることは、キャリアメイキング上の出発点といえます。
転職することが「目的」になってはいけません。何かやりたいこと、成し遂げたいこと、その目的を果たすための手段として、「転職」というものがあるはずです。今の会社に留まっていて成し遂げたいことが実現不可能なのであれば、目的の達成のために転職するべきです。
だからこそ棚卸しを定期的に実施して、自分に「できること」と「やりたいこと」を自己整理しておく必要があります。そうした準備ができていないと、大きなチャンスに巡り会っても、気がつかず、見過ごしてしまうかもしれません。
転職における典型的な失敗要因の1つは、転職すること自体が「目的」になってしまっていることです。棚卸しが十分にできていれば、目的と手段が逆転することはまず起こりえませんから、転職の成功確率はグンと高まることでしょう。