サラリーマン生活の最後にもらえる退職金。誰もが大喜び!と思いきや、最近はそうもいかない人が多いようです。さらには、昨今話題の岸田首相による退職金課税宣言で追い打ちとなる可能性も……。本記事では、Aさんの事例とともに話題の退職金課税について、FP1級の川淵ゆかり氏がわかりやすく解説します。
月収70万円、60歳・部長職のサラリーマンが落胆する“衝撃の退職金額”…「岸田首相・退職金課税宣言」で今後さらなる追い打ちか【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金に大きな差がついた同期の部長職の2人

今年定年を迎えた60歳のAさんとBさんは大学の同期で、卒業後はそれぞれ別の機械製造会社に勤めました。40歳を過ぎたころ、Aさんの会社はバブルが弾けた影響により倒産、この先どうしようかと迷っていたときにAさんの技術力を評価していたBさんが自分の会社に誘ってくれて、一緒に働くことになりました。この会社はロボットアームの製造に早くから着手するなど優秀な企業でしたが、途中入社のAさんも大きな力を発揮して、現在もいい業績を上げ続けています。


その後は2人とも月収70万円となり、部長職まで勤め、定年となったわけですが、その退職金額には大きな差が出てしまいました。Bさんは勤続38年で約2,500万円の退職金を手にしました。Aさんは勤続19年でしたが、Bさんとは同じような給料で部長職にも同じ時期に昇進しましたので、「Bさんの半分くらいは出るだろう」と考えていました。


ところが、実際にAさんに支払われた退職金は約900万円。会社に大きく貢献をしたつもりのAさんは、この大きな差にショックを受けます。
 

「たったこれだけ? やはり、途中転職者は損なのか……」

 

退職金の計算方法はさまざまありますが、勤続年数の長さは大きく影響し、長ければ長いほどカーブ状に増える仕組みになっています。Aさんのように途中入社の方は、やはり退職金規程を確認しておく必要があります。

 

また、こうした転職により退職金の額に大きな差が出るのを防ぐため、転職先の会社が企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している場合は、転職前の会社の企業型確定拠出年金等の資金を持ち運ぶこと(ポータビリティ)ができ、引き続き運用することができます。もし、転職先が企業型確定拠出年金を導入していない場合には、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移すことができます。

 

企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)は、資産運用で得た利益が非課税となる等、通常の運用よりも有利です。原則60歳まで引き出せない、ということも確実に老後資金を作ることが可能となります。退職金は老後の生活のために大事な資金ですから、転職のたびに退職金を受け取るよりは定年になった際にまとめて受け取れるシステムはいいシステムですよね。

 

ですが、そんな大事な退職金にも税金がかかります。退職金の課税の仕組みを確認しておきましょう。