6.認知の訴え
(1)父子関係について
判例(最二小判昭和37年4月27日民集16巻7号1247頁)は、母子関係については分娩の事実があれば当然に発生するとしていますが、父子関係については民法上嫡出推定が及ばない限り、認知によるほかありません(民法779条)。
認知には父親が嫡出でない子を子と認めて届出をする任意認知(民法779条、781条1項)と、裁判により認知をする強制認知(民法787条)があります。認知の効力は出生の時に遡及するため(民法784条)、他の相続人との関係で大きく相続分に影響することになります。
(2)原告適格・被告適格
原告適格を有するのは認知されていない子ですが、子が既に死亡している場合はその直系卑属又はその法定代理人です(民法787条)。父親とされる者が生存している間は父親が被告となり、既に死亡している場合は検察官が被告となります(人事訴訟法12条3項)。なお、父親の死後3年を経過しているときは、認知の訴えを提起できないことに注意が必要です(民法787条)。
(3)認知の原因
認知の訴えは、上記出訴期間や原告適格を前提に、①認知の対象となる父子に生物学的な父子関係が存在すること、②子に法律上の父がいないことを子において主張立証することになります。
7.親子関係不存在確認の訴え
(1)原告適格・被告適格
親子関係不存在確認の訴えは、原則として確認の利益を有する者であれば原告適格を有します。被相続人の子が複数いる場合に、一部の子の親子関係を否定する場合などです。
ただし、前提となる親子関係について、それが嫡出推定が及ぶ嫡出子と父親との関係である場合には、親子関係を否定するためには嫡出否認の訴えによる必要があり、この父親が民法777条所定の期間(子の出生を知ってから1年以内)に嫡出否認の訴えを提起しないときは、親子関係を否定することはできません。
なお、父親が子の出生前に死亡したとき又は民法777条に定める期間内に嫡出否認の訴えを提起しないで死亡したときは、その子のために相続権を害される者その他父親の三親等内の血族は、父親の死亡から1年以内に限り、嫡出否認の訴えを提起することができるとされます(人事訴訟法41条1項)。親子関係不存在確認の訴えにおける被告は、当該親子関係の他方の当事者です。
(2)親子関係否定の原因
上記述べたとおり、親子関係不存在確認の訴えは、「不存在確認の訴え」という訴訟の性質上、被告側において親子関係の存在を主張立証すべきと解されますが、現在は主としてその立証のためにDNA鑑定が実施されています。当事者の死亡など、DNA鑑定を実施できない事件もありますが、そうした場合は裁判所は各種間接事実(出生時の親の状況、出生届の作成・提出状況等)から親子関係の存否を判断することになります。
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