(※写真はイメージです/PIXTA)

相続人の中に外国居住者がいる場合の遺産分割はどうなるのでしょうか。また、外国居住者の場合、連絡が取れないということもありえるため、相続手続きは煩雑になる可能性が高いです。そこで本記事では、実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、相続人のなかに連絡を取れない人、外国居住者がいる場合の遺産分割方法について解説します。

3.裁判所の手続きを使う場合

(1)相続放棄について

外国に住んでいる相続人から相続放棄したい旨の連絡がきた場合には、日本国内における相続放棄と同様、裁判所において相続放棄の手続きをします。

 

(2)遺産分割調停について

相続人の一人が外国にいる場合であっても、家事事件手続法3条の13に基づき国際裁判管轄は認められます。そして、日本国内の管轄を確認し、遺産分割調停申立てを行います。

 

相続人の一人が居住している外国の手続きしか知らない場合や日本の手続きに詳しくない場合には、日本法における相続がどのような考えに基づいて行われるか(例えば包括承継であること等)、遺産分割手続はどのように行われるのかを丁寧に説明する必要があります。また、遺産分割調停にあたっては、国内で代理人をつけることで遺産分割が早く進むことも考えられます。

4.相続人が外国籍を有する場合

前述したように、相続の準拠法は被相続人の本国法によるとされています(通則法36条)。Dが日本国籍を有しない場合であっても、被相続人であるAが日本国籍を有する場合には、日本法が適用されますので、日本法に基づいて手続きを行っていくことになります。

 

印鑑登録証明書に代わる書類として取得する書類についてはDが居住する国によって異なってきますので事前に確認しながら進めていきましょう。また、以前日本国籍を有していた人の場合、場合によっては領事館の署名証明が可能になる場合もあるようですので問い合わせをしてみるのもよいでしょう。

5.子Dとは30年ほど音信不通…連絡を取るにはどうする?

相続人のなかに外国に居住している/日本国籍を離脱した人がいて連絡が取れない…

相続人を確定するために相続人に関する戸籍謄本を取得するなかで、相続人が外国に居住していることが判明することや日本国籍を離脱していることが判明することがあります。日本と異なり外国では戸籍制度や住民票に類する制度が無い場合もあり、相続人の確定が困難になることもあります。

 

相続人と連絡をとるための方法として以下のいくつかの方法が考えられます。

 

(1)戸籍調査

国外転出時に外国の転出住所を記載している場合があります。その転出住所を辿って相続人と連絡がとれる場合もあります。

 

(2)出入国在留管理庁における出入国記録に係る開示請求

出入国在留管理庁においては、日本人及び外国人の出入国記録を管理しています。相続人の出入国履歴をとることで日本国内にいるか、外国に出国しているか等の手掛かりを得ることができます。出入国履歴の取得できる人が本人又は法定代理人となっていることから、相続人の一人が外国にいる相続人を探す場合には弁護士会照会の利用が考えられます。

 

(3)外務省における所在調査

外務省では、海外に在留している可能性が高く、所在が確認できない日本人の連絡先などを確認する手段として「所在調査」を行っています。配偶者及び三親等内の親族、又は、弁護士会照会を通じて調査することができますので、同方法を使って調査をすることが考えられます。

 

(4)インターネットでの検索

相続人の名前をインターネットで検索して出てくる場合もあります。また、国によっては有料のサイトで電話帳等が登録されている場合もあります。インターネットで検索して相続人を探してみることも考えられます。

 

(5)日系人コミュニティにおける調査

海外に居住する日本人や日系人は日系人コミュニティのなかでお互いに連絡を取っている場合もあります。また、日本人や日系人を対象に新聞などを発行している場合もあります。コミュニティの情報に基づいて探すことも考えられます。

 

(6)外国の弁護士との協働調査

国によっては、住所を登録する制度がある場合もあります。例えば、オーストラリアでは選挙のための登録制度があり、その登録制度から相続人を辿っていくことも考えられます。

 

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※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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