エリートの代名詞である「キャリア官僚」といえば「東大卒」というのが定番でしたが、近年、その図式が大きく変わろうとしています。またそれにより、思わぬ影響も。みていきましょう。
10年で6割の大幅減…東大生の「キャリア官僚」離れがもたらす「日本の非常事態」

東大卒・キャリア官僚減少の理由

いまだに国家公務員試験合格者数の10人に1人は東大卒という高水準ではあるものの、10年あまりで6割弱の減少という状況。

 

【東京大学「国家公務員合格者数」推移】

2013年:454名

2014年:438名

2015年:459名

2016年:433名

2017年:372名

2018年:329名

2019年:307名

2020年:249名

2021年:256名

2022年:217名

2023年:193名

 

出所:人事院

 

これまで東京大学は「官僚製造学校」と揶揄されるほどの存在感がありました。それが過去の話になりつつありますが、「東京大学のレベルが下がった」わけでも「他大学のレベルが上がった」わけでもなさそうです。

 

2010年以降、景気回復により民間企業志望者が増えたことは、東大卒のキャリア官僚が減った理由のひとつ。昨今、東京大学では大手コンサルティング会社への就職が、ひとつのトレンドになっています。そして昨今、人材の流動性が高まったことも一因とする専門家も。

 

しかし、「東大のキャリア官僚離れ」の一番の要因は、一向に進まない国家公務員の働き方改革といえるでしょう。人事院の『令和4年 人事院勧告』では、就職活動を終えた学生を対象とした意識調査で、国家公務員を就職先として選ばなかった理由として、「採用試験の勉強や準備負担」が最も多く、続いて「長時間労働党の勤務環境に関する不安」が多かったとしています。

 

長時間労働については、2020年度、本府省の他律的業務の比重が高い部署で、4分の1の職員が上限を超え、1ヵ月に100時間未満の上限を超えた職員が13.8%、2~6ヵ月平均で80時間以下の上限を超えた職員が18.1%いたといいます。

 

重要政策に関する法律の立案、国際機関との折衝といった従来の特例業務に加えて、昨今は新型コロナウイルス感染症対策業務も、長時間労働を加速させました。

 

一方で、重責を上回る給与を得ているかといえば疑問符。国家公務員の平均給与は月41万円、年収は650万円ほどといわれています。ほかの統計調査で民間企業と比較すると「大企業>国家公務員>中小企業」といわれていますし、東大卒であれば、絶対ではありませんが、高給が約束されている企業への就職も楽勝でしょう。

 

キャリア官僚の東大卒の比率が下がることで、国家運営に変化が生じ、凝り固まった現状を打破できるかも、とする専門家の声。急激に進展する少子高齢化、拡大するばかりの所得格差、複雑化する国際情勢……いままでにない発想と実行力が求められているなか、確かに同胞ではない者同士のほうが、新たな解決策を提示できるかもしれません。

 

一方で、国家運営能力の低下を危惧する専門家も。東大卒というエリートが減少すること、多数派の力が小さくなることで、組織として弱体化するのでは……という心配です。

 

こうしてみていくと、「東大卒のキャリア官僚の減少」は、想像以上にインパクトが大きいことのよう。私たちも注視していく必要がありそうです。