外貨建て保険は投資に近い…運用の目安は
金融広報中央委員会が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)※」によると、67.3%の方が月々の手取り収入の11%を貯蓄に回しているということがわかっています。これはたとえば手取り収入が30万円の場合、月3万円を貯蓄に回しているということになります。
FPである筆者も、手取りの1割を貯蓄に回すというのは収支バランス上、無理のない割合だと考えます。ただし、その貯蓄額すべてを金融商品に回すことは避けなければいけません。銀行預金など流動性の高いものにも、一定程度預けておくべきでしょう。
では、貯蓄のうちどれくらいの割合を投資などの金融商品にあてるべきなのでしょうか。これは、家族構成や家計状況などにより変わってきます。同調査の「資産構成割合」を参考に考えると、以下のようになります。
【理想の「分散投資」割合(注)】
・預貯金……55.3%
・生命保険(個人年金含む)……13.8%
・損害保険……1.6%
・債券……3.5%
・株式……14.8%
・投資信託……7.0%
・財形貯蓄……1.5%
・その他……2.5%
(注) 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」をもとに筆者が再計算
FPの助言をもとに「払済」を選択
Aさんは普段よりニュースや新聞等で経済状況を把握されており、これまでの為替の動きも理解されている方でした。にもかかわらず、「ここまで円安に振れるとは思わなかった。こうなるのなら、もう少し保険料を抑えておくべきだった」とおっしゃいます。
1ドル140円台は、およそ25年ぶりの水準です。ちなみに、株価もバブル期以来の最高値を記録しています。よくも悪くも、これからの長い人生のなかでは「想定外の状況もありえる」ということを念頭に置きながら、投資や資産形成を行う必要があります。「どこまでの“想定外”を想定するか」については、明確な線引きは難しいかもしれませんが、「投資や資産形成は余裕資金で行う」というのが最善であるように思います。
また、もし想定外の状況となったときに、相談できる専門家がいるかどうかも大切です。
今回のAさんは、筆者への相談を踏まえ、結果的に「外貨建て保険」の保険料支払いを止めながら、保険を続ける「払済」という選択を取りました。これは、これまで支払った保険料をもとに保険内容が再計算され、保険を続けながらも毎月の保険料の支払いを止めることができるというものです。
保険金額や解約返戻金は当初の条件より劣ってしまいますが、定年退職を迎える年齢のころには、解約返戻金はドルベースでこれまで支払った保険料と同じ水準まで戻すことができそうです。
「こんな方法があるなんて知らなかった」とAさん。奥様の出産や教育費など、今後の収支見通しを立てたうえで、改めて投資・資産形成を行うことになりました。
まとめ
投資や資産形成は長期で行うのが鉄則とよくいわれます。その長い期間のあいだには、さまざまな経済状況の変化はもちろん、ご自身の状況の変化や家族環境の変化もあると思います。 FPをはじめ、専門家のアドバイスを参考にすることで、将来への選択肢をさらに広げていただきたいと思います。
【参考】
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス
代表