「ねんきん定期便」で判明した“少なすぎる年金受給額”のワケ
毎年、誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」には、私たちが将来受け取ることのできる年金の情報が記載されています。しかし、実際にこのねんきん定期便をじっくり読んだことがあるという方はそう多くないかもしれません。
不動産会社に勤める43歳のAさんも、そのうちの1人でした。
サラリーマンなどの会社員は通常、厚生年金に加入しています。老後受け取れる厚生年金の額は、被保険者であった期間の給与に応じて決まります。さらに、厚生年金の被保険者は20歳~60歳未満のすべての国民が加入する国民年金にも加入しているため、国民年金(1階部分)と厚生年金(2階部分)両方の年金を受け取ることができます*。
国税庁の調査**によると、日本人の1年を通じた平均給与は約461万円(男性567万円、女性280万円)、うち平均賞与は81万円(男性102万円、女性45万円)となっています。
Aさんの年収は平均男性と同じく約560万円で、手取りになおすと月額約30万円です。毎年「ねんきん定期便」が届いていることは知っていたものの、いつもろくに確認せず、そのままにしていました。
しかし、ある日職場で年金の話が出たことをきっかけに、帰宅して「ねんきん定期便」をじっくり確認してみることに。Aさんは、検索して出てきた「公的年金シミュレーター※」を使って試算してみました。
※ ねんきん定期便に記載されている二次元コードを読み込むことで必要事項が自動的に入力され、将来受け取る年金額を試算することができるツール。50歳未満の国民に届くねんきん定期便には、具体的な将来受け取る年金額は記載されていない。
大学卒業後すぐに新社会人となり、定年まで同じ給与だと仮定すると、65歳から受け取ることができる年金額は年間約197万円(月額約16万円)となります。
しかし、シミュレーターで確認した年金額は、[図表2]のように158万円(月額約13万円)となります。一体なぜなのでしょうか。
Aさんにあった「空白期間」 …追納を逃し“1,000万円が水の泡”に
Aさんは、大学卒業後すぐ社会人となったものの、1年で退職。その後、7年間アルバイトをして生計を立てていました。また、大学在学中の20歳から、フリーター期間を終えるまでの10年間は、「学生納付特例制度」と「納付猶予制度」を使って、年金保険料の免除と猶予を行っていました。
大学生や専門学生を経験したことのある方なら、「学生納付特例制度」を利用すれば学生時代の年金保険料を免除できるということをご存知の方も多いかもしれません。これに加え、フリーターや自営業等、国民年金の被保険者の場合、前年の所得が一定基準以下であれば、保険料の免除または納付猶予を行うことができます。
保険料免除を利用した場合、免除の額に応じ将来の年金額に反映されるものの、納付猶予の場合、年金額の反映はありません。
年金の免除や納付猶予を行うと、10年間は追納といい、遡って保険料を支払うことができます。しかし、Aさんは現在43歳。追納期間である10年を過ぎてしまっています。そのため、Aさんが今後定年まで働き、年金を受け取れたとしても、未納分が減額された年金額となります。
追納した場合としなかった場合の差は1ヵ月あたり約3万円と一見大きな差はないように思えますが、いまは人生100年時代です。仮に65歳から30年間生きたとすると、30年×12ヵ月×3万円=約1,000万円もの差が出てくるのです。Aさんはこの事実に大きなショックを受けてしまいました。