生活保護は、貧困によって最低限の生活すらできなくなった場合に、最後のセーフティネットとして機能するものです。しかし、誤解や偏見のために、本来受給すべき人が受給できていない実態があります。本記事では、これまで10,000件以上の生活保護申請サポートを行ってきた特定行政書士の三木ひとみ氏が、著書『わたし生活保護を受けられますか』(ペンコム)から、生活保護についての正確な知識を解説します。
「1日3食取れない」ほど困窮しているのに…「生活保護」を申請しても「却下」されてしまう理由【特定行政書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

保護費受け取りまでの生活を支援してもらう方法とは

生活保護申請をする時点で、もう資産も収入もほとんどなく、同居の頼れる親族などもいないということなら、申請後から保護決定し、保護費を受け取るまでの生活については、福祉事務所に相談してください。

 

1日3食取るのに困っているとはっきりとSOSの声を上げれば、食糧支援や、貸付金の交付を受ける方法など、親身に相談にのってくれるはずです。

 

食事を確保することができない状態なら、すぐに最寄りの役所に行って、「次の食事を用意することができません。助けてもらえないと、食べることができません」と、はっきりと伝えてください。必ず助けてもらえます。

 

もしも、福祉事務所で生活保護決定するまでは何もできないなど心ない対応があれば、その福祉事務所がある都道府県庁に電話をして、生活保護の担当部署にはっきりと事実を訴えてください。

 

1日3度の食事を取ることは守られるべき権利です。

 

生活保護を申請した日以降に、誰かからお金を借りたりもらったりすれば、それは収入とみなされ、収入分は基本的に(就労収入の一部控除などを除き)減額されます。

 

しかし、申請日前の援助や借金によって生活保護が受けられなくなったり、生活保護費が減額されたりすることはありません。

 

◆親族による過去の支援を理由に生活保護が受けられないとか、過去に支援した分が減額されるといったことはない

収入が一定以上ある家族と、これまで同居していた無年金無資産(あるいは低額年金など)の高齢者の方の場合、民間の老人ホームなどに入所すれば単独申請が可能です。

 

ところが、これまで家族が面倒を見てきたのだから数カ月は申請できないと言われたという相談もよく受けます。

 

そのようなことはありませんから、施設入所した当日に単身で生活保護申請することは可能です。

 

仕送りや食糧支援など、何らかの経済援助をしてきた親族がいても、生活保護申請日時点で別居しており、かつ申請日以降に理由にかかわらず今後の経済援助ができない(実際にない)ということであれば、過去の支援を理由に生活保護が受けられないとか、過去に支援した分が減額されるといったことはありません。

 

また、経済援助ができないなら、その証明となる資料を出してほしいなどと求められることがありますが、これも任意の協力要請で強制でもなければ、罰則なども当然ありません。

 

別居かつ今後経済援助が(理由にかかわらず)できない親族の資産や負債状況といった個人情報を、開示しなければいけないということはありません。

 

別居の親族が、こうした求めに協力をしないことを理由に、保護費が減らされたり、保護を受けられなくなることはありません。

 

 

三木 ひとみ

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所

特定行政書士