両親の提案から、二世帯住宅を建て一緒に暮らすことにしたA夫妻。「幸せな暮らし」のはずが、Aさんの父の死後、Aさんの弟から放たれた一言で事態は最悪の展開に……。株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが、A夫妻の事例とともに二世帯住宅購入の注意点について解説します。
世帯年収1,050万円・40歳共働き夫婦「二世帯住宅購入」も…父の死後、弟から放たれた「痛烈な一言」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

家を建てる前に検討すべきだった4つのポイント

二世帯住宅で幸せな日々を送るはずが、思わぬ事態に陥ってしまったA夫妻。月日が経ったいまも、解決にはいたっていません。いったい、どうすればよかったのでしょうか。

 

絶対的な答えはありませんが、筆者はA夫妻とご両親が一緒に暮らし始める“前”に検討しておくべきだったと感じることがいくつかあります。

 

1.二世帯住宅を建てる際の「弟の賛成」は、両親の「相続」が起こったあとの暮らしまでイメージできていたか

⇒A夫妻に「一緒に住まないか」と提案したとき、すでにご両親は70代半ばでしたから、ご両親・Aさん・Aさんの弟全員が、「ご両親の相続」が起こった場合どうするか見通して対策をとっておく必要がありました。可能であれば、遺言書をAさんの父に準備してもらうといいでしょう。

 

2.“親(父)の土地をタダで使う”ことへの留保・検討

⇒Aさん・Bさんにとって、「親の土地をタダで使わせてもらう」ことに代償がなかったか、考えておく必要があったでしょう。「地代を払って土地を借りる」「土地を買う」など、ほかの選択肢も含めて検討する必要があります。

 

3.「お世話をする」ことの定義

⇒弟の期待していた「親の世話をする」ということが具体的にどういうことなのか、肉体的なサポートなのか、精神的なサポートなのか、金銭管理のサポートなのか具体的に話し合う必要がありました。

 

4.二世帯住宅を「離れるときのこと」を考える

⇒建てる際に考えることは難しいかもしれませんが、「もしも二世帯住宅に住めなくなり、離れる場合はどういうときか・どういう選択をするか」も話し合っておく必要があります。売却のうえ引越しすることが受け入れられるのか、もし引っ越しをする場合には、子供の学校の問題をどうするかまで視野に入れて話し合っておくと、万が一の際にトラブルを避けることができます。

 

まとめ…早めの生前対策を

家を建てるときというのは、だれしも気持ちが高揚します。しかし、話が盛り上がり「よし!このアイデアで行こう!」と勢いで判断すると、選択を見誤るケースが少なくありません。

 

二世帯住宅に住んでいる方に話を聞くと、「建てるときは熱心に担当者が話を聞いてくれたが、建ててから起こる課題は知らんぷり」という声もあります。「建築メーカーは住宅を建ててもらうのが仕事」ということを念頭に置き、建てる前に話し合うべき項目を冷静に考えておく必要がありそうです。

 

ご自身だけで考えることに限界を感じる場合は、無理をせず信頼できる第三者に相談することをおすすめします。

 

※本記事に登場する人物の背景は、事実関係を損なわない範囲で入れ替えています。

 

 

森 拓哉

株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン

代表取締役