出生数の低下とともに「子のいない夫婦」が増加
少子高齢化と晩婚化が叫ばれるようになり、久しく時間が経過しました。厚生労働省の発表によると、年間の出生数は2016年に100万人を割り込み、2020年には84万人、2022年には77万747人と統計を始めた1899年以降で最少という結果です。1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生率」は1.26に落ち込んでいます。
また、2021年の出生動向基本調査によると、結婚持続期間15~19年間の出生子ども数0人の夫婦は7.7%あり、20年前の3.4%と比べると4.3%ほど上昇しています。生まれる子どもの数が少ないとともに、子どもを持たない夫婦も増えていることが伺えます。
望む望まないは別にして、子どものいない夫婦生活を送るということは幸せのかたちの1つです。子育てに時間や労力、お金を使うことなく、夫婦共通の趣味を楽しむ時間は人生の中でも大切な輝けるひと時でしょう。
一方で日常生活を送るだけでは決してみえてこない「法定相続人」という考え方が、後々のトラブル、幸せを破壊しかねないことも現実には起こり得ます。子どものいない夫婦に潜むリスクとはどのようなものか、事例を交えてみていきたいと思います。
40歳の晩婚夫婦、共通の趣味を大切に過ごした結婚生活
Aさん(66歳)は元・公務員、奥さんのBさん(61歳)は働いたことが無く専業主婦です。趣味の山登りで意気投合したお2人、結婚したのはお互い40歳になってからのことでした。ご年齢から積極的に子どもを望むこともお互いになく、子宝には恵まれませんでしたが、その分趣味の山登りには毎週のように一緒に出かけ、日本全国の山々の風景を楽しんで過ごして、幸せな日々を過ごしてきました。
Aさんは一人っ子でもあったことから、50歳を過ぎたころに母親から引き継いだ実家の不動産とそこに隣接する駐車場をすべて所有していました。A夫妻に子どもがいなかったため、相続人は妻のBさんしかおらず、万一のことがあったときにはBさんがAさんの退職金2,500万円と住む家を引き継いで、遺族年金を受け取りながら細々暮らしていけばいいと考えていました。