婚姻の約4件に1件が「再婚」となっている日本。そのうちの2~3割程度は子連れでの家庭を築いています。複雑化する家族の形のなかで、問題となるのが遺産相続。本記事ではAさんの事例とともに、再婚家庭における相続の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
「面倒を看てくれてありがとう。全財産3,000万円は愛娘へ」80代父の死後、なぜか銀行から門前払いを受ける長女…世間知らずな親子に訪れた悲劇【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

婚姻の4件に1件は「再婚」

社会が多様化していくなかで家族の姿もさまざまな形があります。

 

結婚する男女は減少の一途をたどっており、内閣府男女共同参画局のデータによると、令和2年は52万6,000件、令和3年は51万4,000件と戦後で最も少ない件数となりました。一方で全婚姻件数に占める再婚件数の割合は1970年代以降増大傾向にあり、令和2年の再婚件数は13万9,000件と、婚姻の約4件に1件は再婚となっています。

 

夫婦いずれかに子どもがおり、再婚して子連れで家庭を築く家族は、ステップファミリーと呼ばれています。正確なデータはないのですが、13.9万件の再婚件数のうち2~3割程度はステップファミリーと推測する試算もあります。

 

良い悪いはまったくありませんが、家族の形が複雑になる傾向があり、人生の計画を立てていくうえでステップファミリー内での家族関係をどう位置付けておくかは、未来を安心して過ごすうえで大切なポイントになってきます。

40年前に出会った両親

75歳のAさんは、妻Bさんと2人で穏やかな老後を暮らしています。とても幸せな老後生活を営んでいる2人ですが、過去にはさまざまなことを乗り越えてこの平穏な暮らしへとたどり着きました。

 

Aさんには28歳のころに離婚歴があります。若かりしころの勢いで結婚したものの最初の結婚相手とは価値観の不一致もあり、子どももいなかったため離婚するまでの時間はかかりませんでした。離婚後はしばらくパートナーを探す気にもなれず、仕事に没頭して過ごしていました。そんなAさんに転機が訪れたのは、40歳を過ぎたころのことです。これが、取引先に事務員として入社してきた同世代のBさんとの出会いでした。

 

お互いの家庭事情はあまり詳しくなかったのですが、ある日の取引先の忘年会に呼ばれたAさんは隣の席になったBさんとお互いの家族歴を少しだけ明かし合うことがありました。Bさんはご主人の暴力的な振る舞いが原因となり、取引先への入社前にちょうど離婚をしていたのです。