小論文が受験科目にある人へ
僕が卒業した名古屋大学法学部の受験科目は、「数学・英語・小論文」の3科目でしたつまり、国語よりも「小論文」の勉強が必須であり、これまで重点的に学習してきた科目の一つです。
受験期には、いくつかの小論文模試(予備校主催の正式な大学プレを含む)を受け、その度に模範解答を分析しました。そこで学んだノウハウについて、ここに分かりやすくまとめたいと思います。
まず、小論文が問題として出題される場合、その形式は次の2つです。
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<小論文の問題形式>
(1)要約型→「本文全体(傍線部)を〇〇〇字以内で要約せよ。」
(2)論述型→「本文(傍線部)について、自分の意見や考えを〇〇〇字以内で論述せよ。」
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そして、次の2点はとても重要なことなので、先に述べておきますね。
●受験する大学のプレ模試・オープン模試は必ず受験する。
⇒なぜなら小論文を書く機会がそれくらいしかないから。
●模試の解答は捨てずに、本番まで集めてとっておく。
⇒どんな参考書よりも一番の参考になるから。むしろ参考になる本は他にない。
(1)要約型の対策:要約型の9割は「文章の切り抜き」でOK
「要約」という言葉を聞いて皆さんはどのように解釈するでしょうか?
かつての僕は、「要約=自分なりに本文をまとめ直すこと」だと思い、文章の一部を自分なりの言葉で勝手に書き換えたりすることがありました。しかし、これは致命的なミスで、まったく良い点数を取ることができませんでした。
そこで、小論文模試を受ける度に、その模範解答を繰り返し分析しました。すると、そのほとんどの解答が、「要約=文章の切り抜き」でしかないことに気が付きました。
つまり、「要約せよ」といわれたからといって、いちいち自分の言葉でまとめ直したり、新しい熟語や慣用句を書き加えたりという作業は全くもって不要なのです。むしろ、自分なりの言葉や表現を組み込んでしまうと、誤った解釈を加えることになります。
でも考えると確かにそうです。どんな本や評論の文章も、必ず著者や作者が特別な意図を込めて、彼ら彼女らなりの言葉で表現しています。それを、自分の言葉で勝手に書き換えることなどは言語道断、NGです。
つまり、いかに本文を一字一句変えることなく要約することができるかを意識すると、この問題はイージーモードに変わります。特に小論文に慣れていない方は、文章をそのまま切り抜きすることを意識して挑戦してみてください。これを知っていると知っていないとでは、点数は雲泥の差ですし、逆に言えば、簡単に点を稼げる問題のため、個人的には失えば失うほどもったいないと感じます。
また、このことを知っておけば、解答にかかる時間も少なくなります。そのため、次に控えるメインの問題(論述問題)に余裕を持って取り組むことができます。要約の問題は点数を効率的に稼ぐチャンス問題なので、ぜひ自信を持って、一早く解答を終えることを意識しながら取り組んでみてください。
ただ、注意しなければならないのが、稀(まれ)に要約問題について「書き換えること」を容認している小論文模試があります。これに関しては、志望校によって要約スタイルが変わる可能性があるため、過去問などで確認してみてください。ですが、僕が出合ってきた小論文模試の9割は、「要約=文章の切り抜き」として解答が作成されていたので、大半がこの形式と考えて問題ないと思います。
(2)論述型の問題:「合格点が取れる文章」を書く2ステップ
「論述型」の問いでは「〇〇について自分の意見や考えを述べよ。」と問われることがほとんどです。そのため、先ほどの要約問題とは反対に、自分の考えを一から文章にしつつ、本文を踏まえた上で表現を考えなければなりません。そう考えると「難しい」とか「書きにくい」という印象を受けてしまいますが、実際のところは、次の2つのステップだけで、合格点が取れる文章を簡単に書くことができます。
①ある程度決まった「型」を用意する
②具体例を調べておいて、「型」に必要なことを当てはめていく
■ステップ①:ある程度決まった「型」を用意しよう
問題ごとで出題内容は全く違うはずなのに、その解答には「接続詞」「文章の流れ」「文章の配分」「段落の位置」など、書き方の共通点がたくさん隠されているのです。そんな分析を通して作ったのが、「序論」「本論」「結論」で構成された、僕の「マイ型」です。
【序論:問題文に対する自分の立場を述べる――2割】
まずは、最初の段階で自分の意見をはっきりと述べてしまいます。賛成か反対かを選ぶ場合でも、自分の考えを一から述べる場合でも、とにかく「Q.問題文」に対して、「A.私はこうだ」という立場をはっきりさせます。この考えについて、「なぜ」「どうして」という理由付けを本論で書いていくというのが、小論文における王道の流れです。
また、小論文は、自分の本心を書くのも正解ですし、嘘の意見を貫いて書くのも正解です。一方で、文字数足らずで意見を十分に書かないままに終わることは唯一の不正解です。そのため、自分の立場を決めるのはなるべく早く、具体的には「一分以内」を目標にしましょう。
【本論:理由+具体例を述べる――6割】
ここでは、序論に対する理由を述べます。「私がこのように考える理由は、次の〇点である。一つ目は、〜。」という形で整理して書くようにしましょう。また、理由付けは、具体例を出すと加点要素になります。こういう出来事が実際にあったから、こう考える、とすれば、説得力が増して読み手が読んでいて「フムフム」と納得しやすい文章になります。
また、同じ文章は何度も繰り返し乱用してはいけません。語彙力がない、内容が薄いと思われてしまうからです。小説のような比喩表現も絶対に避けましょう。小論文は、僕らの文才を披露する場ではないからです。
【結論:意見をまとめて帳尻合わせする――2割】
「したがって、(結論)。」という形で、最後の締めくくりを書きます。ただ、一行ぽつんと書いて終わるのではなく、数行ほどかけて、文字数を帳尻合わせする形で意見を書いて終えましょう。小論文は「終わりよければ、全てよし」で済まないですが、締めくくりが綺麗だと答案の印象が良くなります。
皆さんもぜひ、この型を見た上で、自分なりのより良い「マイ型」を仕上げながら、出題意図に合った文章を本番で書ける力をつけていただきたいなと思います。
■ステップ②:具体例を調べておいて、「型」に必要なことを当てはめていこう
この「マイ型」に当てはめていく内容ですが、それは自分が受ける学部が何を求めているかを考えて内容を決めます。
たとえば、僕の場合は法学部ですから、法律や政治のことを書くとすごい親和性が出ます。経済学部ならお金や経済にまつわる話を書くといいです。時事問題などの現実的な問題や社会で話題になっているトピックを絡めると、読む側(採点者:学部の教授)からしても面白く興味深い内容になるので、より良い点数につながりやすいです。
「小論文を書く生徒は、ニュースや新聞をチェックしろ」と指示されがちですが、何でもかんでもチェックすればいいというわけではありません。「自分の目指す学部」に関する話題を調べておくのです。つまり、新聞やニュースばかりを見聞きするというよりかは、きちんと社会の教科書や資料集といった専門的な情報が集まる教材に目を向けておくと他の人との差をつくりやすいです。
そのチェックした内容を「具体例」として書き出し「その問題点は何なのか、それに対する自分の考えはどのようなものか」というポイントさえ書ければ、平均よりもいい点数を取れること間違いなしです。
また、これは基本的なことですが、試験本番はできるだけ綺麗な字で、素早く書く、そして誤字脱字に気をつけることを意識して取り組んでください*。僕の大学の教授が講義の際に、字の綺麗さで採点時の印象は大きく変わると言っていたくらいですから、丁寧に仕上げるに越したことはないでしょう(*点数に直接作用するかは不明です。)。
さらに、冒頭部分で、「小論文に関するおすすめの参考書はない」とお話ししましたが、その理由は、どの参考書に書かれていることも、内容が「抽象的」で分かりにくいからです。多くの「小論文の書き方」と題する本は、たしかに参考になる部分はあるかもしれませんが、僕が読んだ限りでは、現場の認識とかなり違うものがあったり、いざ参考にしても実際の解答とは正反対の内容だったりすることがありました。
そして、「抽象的」だからこそ、自分の学部や学科の「具体的な部分(時事問題など)」にまで落とし込んで理解するのも難しかったです。
大切なことなので、もう一度書いておきます。
本当に必要なのは、受ける模試全部の解答文をきちんととっておくこと、そしてそれらを見比べて分析することです。時間が限られた受験生活の中で、最も参考にすべきは「模範解答」であることを忘れないでください。
さらにいうと、大学に入ってからは、課題でレポートを書く機会が山ほどあります。その際に、自分の考察や意見を厚く書かなければなりませんが、小論文の経験があれば全く苦ではないですし、むしろ得意で楽しいとまで感じられるようになります。
pikeチャンネル
名古屋大学法学部卒業。「Study with me」やきれいなノートの取り方といった勉強系コンテンツのほか、白を基調としたシンプルで洗練された暮らしぶりをYouTubeで配信し、若い世代を中心に支持される。自身のブランド「White Studio」では使い勝手にこだわったペンケースやノートセットを制作するなど、文具開発も手掛ける。YouTube登録者数は約55.3万人(2023年5月時点)。