ホンダの「EV開発」に経産省が「補助金1,587億円」支給だが…足枷となりかねない日本の「自動車税制」の問題点

ホンダの「EV開発」に経産省が「補助金1,587億円」支給だが…足枷となりかねない日本の「自動車税制」の問題点
(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年4月28日、経済産業省は、ホンダがGSユアサと共同でEV(電気自動車)や電池を製造する工場を国内に新設することに対し、1,587億円の補助金を支給すると発表しました。日本の自動車メーカーはEV開発で遅れを取っており、挽回のためEVを量産する体制を整えるねらいがあります。しかし、そこで支障となりかねないのが日本の自動車税制です。本記事では、現行の自動車関連税制の問題点を整理して解説します。

◆自動車税・軽自動車税の問題点

次に、「自動車税」「軽自動車税」に関する問題について解説します。

 

少々ややこしいのですが、「自動車税」は都道府県税、「軽自動車税」は市町村税です。いずれも1950年に導入された税金であり、当初は「ぜいたく税」の性格をもつものと扱われていました。自動車を所有する人がごく一部の富裕層に限られたからです。

 

しかし、その後、自動車は広く一般国民に普及しています。特に、公共交通機関が発達していない地域の日常的な交通手段として必要不可欠です。

 

したがって、今日、自動車税・軽自動車税を「ぜいたく税」として説明するには無理があります。既にぜいたく品でなくなった自動車に対して高い税金を課するのはおかしいということになります。

 

ところが、自動車税・軽自動車税の負担は重いままです。JAF(日本自動車連盟)は、2022年10月に公表した「自動車税制改正に関する要望書」において、日本の自動車税・自動車重量税を合わせた税負担が欧米諸国(イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ)と比べ約2.2~31倍にのぼると指摘しています。

 

これに加え、新規登録から13年経過すると税率が高くなるという問題があります。前述の自動車重量税と同様の問題です。

 

しかも、2019年10月に行われた「自動車税の恒久減税」は、同年月以降に新車新規登録を受けた車両のみが対象です。

 

もともとの「ぜいたく税」という考え方からすれば、本来、新車を乗り換える経済的余裕がある人ほど税率を高くし、中古車ほど税率を低く抑えるべきということになるはずです。ところが、その逆になっているということです。

 

◆税金以外の経済的負担も

また、税金以外にも、自動車保険(「自賠責保険」と「任意保険」)の保険料、2年に1回の車検の費用等がかかります。

EVについては「走行距離課税」の問題も

なお、EVについては、2022年の一時期、走行した距離に応じて課税する「走行距離課税」が導入されるのではないかということが話題になりました。

 

走行距離課税については、鈴木財務大臣が2022年10月に参議院予算委員会で導入の可能性について言及しましたが、その際に挙げられた理由は以下の2つです。

 

・EVにはガソリン税のような燃料に対する課税がない

・EVは車体が重いため、道路の維持補修の負担が増大する

 

しかし、「道路の維持補修の負担」という名目で課税するであれば、道路特定財源を実質的に復活させることになります。また、自動車重量税と存在意義が同じ税金がもう一つ設けられることになり、その論理的関係が問題となります。

 

また、EVに走行距離課税を適用した場合、ガソリン車への適用はどうするのかという問題も発生します。

 

このように、現行の自動車関連税制は問題が多く、税金をはじめとする各種負担も大きくなっています。それが若い世代の所得減と相まって「クルマ離れ」に拍車をかけているとの指摘もあります。

 

日本の自動車メーカーがEVの生産体制を整備しようとしても、そこに国を挙げてせっかく補助金を出してサポートしようとしても、現行の自動車関連の税制のあり方が、その障害になってしまう危険性があります。

 

政府・国会には、早急に現行の自動車税制を見直し、すべての国民・自動車ユーザーにとって公平かつ納得感のある税制に構築し直すことが求められています。

 

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