87歳のYさんは、20年間老々介護をしていた認知症の妻を亡くしました。悲しむYさんでしたが、妻の葬儀のあと、疎遠だった妻の弟から衝撃のひと言を投げかけられ……。本記事では、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、Yさんの事例とともに子のいない夫婦に起こり得るトラブルについて解説します。
〈子のいない夫婦〉「年金月14万円」で87歳夫、認知症の85歳妻を20年間「老老介護」も…葬儀後に義弟が放った“衝撃の一言”【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子のいない夫婦…配偶者だけに相続させるには?

(※写真はイメージです/PIXTA)
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今回のケースでは、Yさんは妻と2人ということで、相続に対しても問題が起きることは考えていませんでした。古い考えでは、相続は相続人の特定の人だけに相続することができると思う人もいたのではないでしょうか。しかし、現在では相続人の権利も主張できるようになり、相続人に対して、一定の割合で財産分与が必要となります。

 

Yさんの妻のように、配偶者のYさんと弟がいる場合には、Yさんに財産の4分の3、弟に4分の1が法定相続分となります。また認知症となってしまった妻の通帳からYさんが現金を引き出すことはできず、法定後見制度を申請したとしても、現在の制度ではやはり現金を自由に引き出すことはできません。

 

民事信託という方法もありますが、この方法を利用する場合は、信託契約を結ぶことになり、やはり認知症の場合に契約行為はできませんので、認知症になる前に契約を結んでおく必要があります。

 

今回のような子どものいない夫婦で、兄弟の親族がいる場合には、その兄弟も法定相続人になります。配偶者だけに相続財産を相続させたい場合には、遺言を残す必要があります。今回はすでに認知症になってしまっているため、遺言書を残すこともできませんでした。

 

人生100年時代といわれるようになりましたが、健康で長生きできるとは限りません。遺言書ですべての財産をYさんに相続させるというような内容を残しておくと、今回のケースでは兄弟には遺留分がないため、思いどおりYさんに相続することができます。

 

公証役場で作成する遺言書もありますが、自筆遺言を法務局に保管しておくことができる自筆証書遺言保管制度も始まっていますので、残された人が揉めないために早めに準備することも大切です。

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表